「だーかーらぁ!が姫なら王子は俺だっつってんだろぃ!?」
「プリッ。王子はあんま出て来ん。目立ちたがりなお前さんじゃったら小人の方が良か」
「問題はそこじゃねーっつ−の!!」
「それにお前は王子っぽく無い。まだ俺のがマシじゃ」


「…。」


ただいま、立海祭の我がクラスがやる劇「白雪姫」の配役会議中です

















王子のお仕事

















「あ、あのさ…落ち着いてよ2人とも。何でそんなに熱くなってんの」
「「 お前が主役(白雪姫)だから 」」
「はぁ?」


わっけわかんない。

何であたしが主役だとこうなるんですかー!


「何であたしだとそうなるの?」
「…や、ホラお前可愛いし小っこいから俺との方が合うじゃん?ビジュアル的にも」
「いや、丸井は根本的なところからして違うから駄目じゃ」

「…あたしは別にどっちでもいいんだけど( っていうか他の人は?あんた達のどっちかに決定なの? )」


2人とも友達だし仲良いからどっちでもいいんだけど…

…ブン太が良いなぁ

やっぱ、好きな人が王子ってうれしいじゃん。

…キスシーンもあるし( フリだけどね )


「じゃあ此処は公平にジャンケンと行こうじゃねぇか仁王!」
「受けて立ったるけぇ、来い!」

…。

「「最初はグー  じゃんけん」」


「「 ほいっ 」」



丸井:グー

仁王:パー



「クク…残念無念また来週…ってな」
「くっそぉおおー!」

「( ちょっと残念だけど…まぁいっか ) じゃあ仁王、宜しくね」
「宜しゅうの」


仁王は切れ長の綺麗な目を細めて笑う

…うん、王子っぽいね。格好良いし


「…俺は」
「うん?」
「小人になる」
「あ、うん  似合うと思うよ」
「(ガーン) …仁王が本当にキスしないか見張っててやる
「?何か言った?」
「いーや何でも無いぜぃ」




















そしてスパルタ委員長(演劇部部長)による本番までの演技練習を乗り越え。



















「ああああどうしようブン太…本番だよ…」
「ああ、本番だな」
「緊張してないの?」
「まぁ、それなりには」

「開演1時間前でーす  キャストの人は着替えてきてください」

「ギャアアアアアア」
「ホレ行くぞぃ」
「はひ…」


ブン太に引き摺られるようにしながら更衣室へ。

かの有名なドレス(ワンピースに近いなぁ)に着替え、赤いカチューシャをつけ、完成。

…ってのは嘘で、メイク係(クラスのオシャレな女の子)にメイクをしてもらい、やっと完成。


「ああ恥ずかしい…」


更衣室から出ると。


「………。」

「…ブン太!うっわぁ…」


可愛い…似合いすぎだよブン太…!


「…ブン太ー?」
「(ハッ)あ、いや どうも。」
「はぁどうも。…じゃなくてどうしたの?」
「いや、ちょっと見とれて…だああああーいや今のは聞かなかったことに」
「…ブン太…」
「……似合ってる。すっげー可愛い」


お世辞でも嬉しいよ

でも嬉しすぎて言葉が出ない…ゴメンね


「おー可愛いのぅ
「ひょわっ!?」
「てめー仁王!」


後ろから抱きすくめられた。

…仁王だ


「え、えーと仁王  放して?」
「いや」
「…王子姿見たいんだけど」
「……(離)」


放してくれたので、その姿を一目見ようと振り返る。


「…うわー王子だ…王子がいるよ…」
「お褒めの言葉ありがとさん」
「んー…でもブン太の方が可愛いし似合ってるなぁー」

「( 嬉しい…嬉しいけど悲しい! )」


「開演30分前でーす  最終打ち合わせ入りまーす
 キャストの人達はAの舞台袖、照明や音声、大道具の人達はBの舞台袖へ集まってください」


「ああああああああ」
「行くぞぃ」
「うわああああんん」
「覚悟決めんしゃい」


ブン太と仁王に引き摺られながらAの舞台袖へ。

打ち合わせをし、遂に…


「開演5分前です!全員配置につけー!」


舞台袖にいた皆はわらわらと散っていく。

モチロンあたしも例外でなく。


「頑張ろうね、ブン太  仁王!」
「おう!」
「ああ」


拳を合わせ、微笑み合う。

さぁ、やるからには頑張るぞ!










ブ――――









幕が上がり、ナレーションから始まり  あたし、継母、鏡と…次々にキャストが舞台に上がり ストーリーは始まった




















物語は進んでゆく。



そして、休憩――…丁度、白雪姫が小人達と暮らし始めたところで 舞台は暗転する



あたしも舞台裏に向かうために袖へと走る

舞台を降りようと階段に差し掛かったとき――…



どんっ



「( え――…? )」



背中を  押された



「きゃっ…」

!!!」



ズザァ―――ッ



痛みはない


あるのは…温もり。



「( っ誰…? )」



背中を押した人以上に  あたしを庇った人は…






「仁、王…」

「無事か…

「う、うん…あたしは…」

「主役が怪我するワケには行かん」

「そ、そんなの仁王だって」

「俺は王子。出番の少ない、な。それに、まだ出とらんから大丈夫」

「まだ出てないから…って…まさか」

「…足首、捻ったみたいじゃ。歩けん」

「そんな…!」

「……王子を お前に任せる」



仁王があたしを…いや、あたしの後ろを見据えて、言った





「丸井」





「え…っ?」



後ろには、何とも言えない表情をしたブン太が居た



「お前さんは…ずっと見とったから、覚えとるじゃろ?セリフも、動きも」

「お前は…お前はそれで良いのかよ 仁王」

「…俺の王子の仕事は終わったけぇ、姫を助けたじゃろ?
 突き落とした奴のことは俺に任せんしゃい。」

「…。」

「仁王…ブン太…」

「…お前は、それで良いか?。王子が、仁王でなく 俺でも」

「う、うん…それは」

「なら 俺はやる。仁王の分まで」


強い瞳でそう言ったブン太に、仁王は満足そうに笑んで、


「…よう言った。ホレ、着替えるけぇさっさと来んしゃい」

「ああ」


更衣室へ向かって走り去っていく二人の背中を見送ってから、あたしは辺りを見渡した




「( 誰があたしを…?あたしの所為で…仁王が… )」




ちょっとだけ、泣きたい気分になった。


でも、泣いてられない。


ここまで来たんだ。最後までやらなくては。


ブン太だって、仁王の後を引き継いで王子を演じるんだ


主役であるあたしがやらなきゃどうするの




数分後、王子姿になって戻ってきたブン太に見惚れるのもほどほどに、




「…最後まで 全力投球で  頑張ろう!」

「…おう!」




もう一度、仁王も一緒に拳をあわせて、気合を入れなおした




















幕が上がり  小人との生活、魔女の来訪、白雪姫の死去、葬式と物語りは進み


そして、





「…どうした  小人達よ」

「王子様!」

「白雪姫が魔女の毒リンゴを食べて死んでしまったのです」

「おお…それは嘆かわしい。」

王子は姫の顔を覗きこむ

「…美しい姫…」



迫真の演技(?)

ブン太…そのセリフは似合わないけど…スゴイ、カッコイイ。



…っていうか待てよ?


もうキスシーンじゃ…



「姫…」


「…っ!」



近いー近いー誓いー!(違)



「ゴメン」


「!?ブン……っ」



ブン太、と名を呼ぼうとしたあたしの言葉はブン太の唇によって飲み込まれた



…キス、された。

本当に。



「好きだ  


観客からの叫び声が聞こえるが、その言葉ははっきりとあたしの耳に届いた


「ブン、太…」



全て小声で話している為、観客には聞こえない。


ただ、王子と姫が見つめ合っているというだけで。




あたしは起き上がり、ここで固まっていてはいけないとストーリーを続ける



「王子様…」


「姫が目覚めたぞー!」



小人達が騒ぐ中、はただ頬を紅潮させてブン太を見つめる


その視線に気付き、ブン太も少し気恥ずかしそうに頬を掻くが、すぐに手を差し伸べる



「白雪姫。私の妃になって下さい」


「…はい」



その手をとり、2人で歩き出す


後ろを小人達が騒ぎながら付いてくる。


少し歩いたところで、舞台は暗転した。



ナレーションが響く中



「…あたしも好きだよ  ブン太」



小さく、隣を歩くブン太に耳打ちした


真っ暗で、殆ど表情は見えないけれど


微笑んでくれたような気がしたので、自然と 頬が緩んだ



















「あーあ…結局くっ付いてしもたんか」


あたし達の前に現れたのは、制服姿の仁王


「に、仁王!」

「俺もんこと好きやったんよー?」

「え、ゴ ゴメンナサイ!?」


驚きのあまり疑問系で謝ってしまった


「クク…まぁえぇとよ。知っとったけぇ、お前らが両思いなんは。」

「知っててお前っ…」

「面白かったからのぅ」


唇で弧を描き微笑んだ仁王に、ブン太は顔を真っ赤にし


「さ、最低野郎…っ!」

「♪」


2人のおいかけっこを見ていると、1人の女の子が寄って来る

…っていうか、クラスメイト。


「あ、あの  さん」

「?どしたの」

「あたし…が…背中を押しました  ごめんなさい!」

「!」

「丸井くんと仁王くんと仲が良くて…王子だし…羨ましくて…」

「んーん。それより、仁王に謝ったら?」

「ち、違うの。その…さっき、仁王くんが私のところへ来て…「突き落としたん、アンタじゃろ」って…
 その時に仁王くんに謝って、「にも謝れ」って言われて…」

「ふぅん…(仁王が…)
 いいよ、別に。こうして無事なんだし。ブン太とも…」

「え?」

「…ううん、なんでもない」



笑って誤魔化してその場を走り去る


向かうは、愛しいあなたのもと




「ブン太っ!」


!聞いてくれよコイツ――」


「好きだよっ」


「っ!?おわあああっ」




飛びついて、ブン太はバランスを崩して倒れた


周りの人達は唖然としている




「バカップル…」




そう仁王が呟いたのは、聞こえないフリをした



















立海祭  クラス劇は 大成功で終わりを告げたのだった。(めでたし めでたし)




























END





06/08/03

1周年御礼企画 真珠 愛璃様リクエスト。

すみませんすみません何かスッゴイばかみたいな作品になって!
VSというVSに慣れない私にはこれが精一杯です…
(つか無理矢理終わらせた感が…)

いつも以上に駄文ですが、愛璃様に捧げます。

1周年、リクエスト、有難うございましたっ

愛璃様のみ苦情可。

             By 紫陽華恋