「ねぇ神田。」
「っ!?…?急に日本語で話しかけんな  ビビるだろうが」
「いやぁごめんごめん。
 …それよりさ、もうクリスマスも終わって28日じゃん?」
「ああ(クリスマスは…散々だったな…)(コムイいつか殺す)」





A Happy new year
         - D.Gray-man -





2人は今のところ、ずっと日本語で話している。
…時々あるのだ。2人だけで、日本語で会話をしているときが。
曰く、 「時々母国の言葉も喋らないと忘れそうになる」 だそうだ


ここは食堂。
数多くその場に居合わせている教団員たちは、その多くが2人の会話を理解できなかった
ただ――…数名の日本出身の教団員以外、だが。


「1月1日にさ、新年会やろうよ」
「…は?」
「日本人であるあたしたちが主催してさ、凧揚げとか 羽子板とかすんの。
 面白そうvv」
「…馬鹿だろ」
「うるさいっ」


神田は呆れた目で楽しそうに話すを見た。
神田だけではない。その場に居合わせた日本出身の教団員たちも、の提案には呆れ、苦笑していた
日本語が分からない団員たちは、何やら微笑ましい(?)光景にとりあえず笑っていた


「とにかく!まぁ凧揚げとか羽子板とかそこまではできないだろうけどさ、
 みんなで騒ぐことくらいできるじゃん?私、おせちとお雑煮作るからさ。ジェリーさんと一緒に」
「作れんのかテメー」
「作れるよ!日本にいた時はよく作ってたんだから。
 で―――神田は、コムイさんにそのこと伝えて、宣伝をお願いしてきて」
あ゛ぁ!?何でオレがコムイに」
「じゃあおせち作る?ジェリーさんと一緒に。
「…チッ。……分かった」


はキッチンへ、神田は室長室へ。
2人の姿が見えなくなったところで、食堂の箸のほうでおやつを食べていた人物は、楽しそうに笑った


「“しんねんかい”ねぇ……何のことか知らないけど面白そうさ♪」





***





「へー。日本では1月1日にそんなことするんだ」
「…ああ」
「楽しそうだね。うん、OK!さっそくみんなに知らせないと!
 1月1日、午前10時食堂にて新年会!
 任務もそれまでに全部終わらせちゃおう☆…ってことで神田くん、さっそく。」
「狽チは?」
「イタリアとドイツだよ☆行ってらっしゃーい」
「…!!」


神田がコムイに渡されたものは任務の書類。
コムイは特に何の説明もせずそれを押し付けると神田を部屋から追い出した
神田は反抗することもできず、それを受け取るしかできなかったのだ。


「( …のせいだ…… )」


呪いの念を送ると、神田はさっさと任務を終わらせるべく、颯爽とその場を去っていった。





「(ゾクッ!!?
 な、何?」
「どうしたのーちゃん」
「う、ううん…何でもない。と思う」
「そーぉ?じゃあとりあえず、材料はこれだけね?作り方は明日あたりにでも復習しましょ」
「うん。ありがとね、ジェリーさん。頑張ろう!」
「もちろん!」


準備 第一段階は終了。

着々と、黒の教団初の新年会の準備は進んでいた―――















1月1日 午前6時


「ふぁああ…あけましておめでおとー、ジェリーさん」
「おはよう、そしておめでとう!さぁ、美味しいおせち&お雑煮作るわよー!」
「おー!」


とジェリー、そして他キッチンスタッフ達はさっそくおせちと雑煮を作りにかかる


「おはよーさぁ!何してんのー」
「ラビ!?何で…」
「前にユウと日本語で何か喋ってたっしょ?それ聞いててさ、何か面白そうだなーって思って」
「( さすがラビ…日本語も理解してんのか )そりゃよかった。じゃ、手伝って☆」
「え!?」
「嫌とは言わせないよー」
「…もう、分かったさ!」


夜明けは、まだ。





***





午前10時


食堂には、もうすでに殆どの団員たちが集まっていた
がやがやと騒がしい食堂内に、キィイイー…ン というマイク音が響き渡る
それにより、食堂内は一瞬にしてシン…と静まり返った


『やぁやぁみんな元気かい?科学班室長のコムイでーす』

ふざけたあいさつに、日ごろから恨みをばら撒いているコムイに食堂中から冷たい視線が向けられる

『もうみんな怖いなぁ☆
 まぁとりあえず、我が教団のリナリーの次にプリンセスのちゃんとお馴染みジェリーさんが作ってくれた、
 今日1月1日に食べるらしい日本の伝統料理の登場でーす』

コムイの言葉に、団員たちの期待は膨らむ
と同時に、キッチンからおせちを持ったやジェリーやラビなどがぞろぞろと出てくる
机に次々と並べていき、瞬く間にさっきまで真っ白だった机の上が、華やかに染まった

団員たちが感動しているのもつかの間、再びキッチンから料理スタッフたちが。
その手に持つおぼんの上に乗っているのは、お雑煮。

お雑煮が一人ひとりに配られたところで、コムイは再びマイクを握った


『じゃあ…あけましておめでとうー!今年もヨロシクねー


それが合図となって、見慣れない豪華な食事に団員たちはかぶりついた。

準備係りだったやラビも空いてる席に座り、おせちを食べる


「ん、美味しいね」
「さすがオレさ!」
「違うと思うよ」
「あれ?」


がふと前を見ると、一人、静かに黙々と食べ続けている神田の姿

そしてその後ろにアレンとリナリーがいた


「これ、ジェリーさんたちだけじゃなくて…ついでにラビも作ったらしいわ」
「え、ラビがですか!?凄いなぁ…」
「あ、これ美味しい」


自らの後ろを見れば、ミランダが隣の人に話しかけられおどおどしながら答える姿。
その列の少し離れたところに隣の人と共に酒を飲むクロウリーの姿が


「ミランダさんってよく見ると美人だな」
「!%*×△#○□!?」
「今度デートしねぇか?」

「美味しいある」
「おおクロちゃん。イケるクチかい?」
「?よく分からないあるが、そうかもしれぬ」


どこを見渡しても、みんな楽しそうだった

やっぱりやってよかったと思う


「大成功だねぇラビ」
「あとでユウも褒めてあげるさ」










『新年会ももうクライマックス(?)へと突入しました
 ここでこの新年会を企画し 準備をしてくれたみなさんに感謝のお言葉をお伝えしたいと思いまーす』


半分くらい酔っ払っているコムイがマイクを握りそう言った

そんなこと知らなかった、ととラビは顔を見合わせる


ちゃん、神田くん、ラビ、ジェリーさんを初めとする厨房スタッフ!

 みんな僕に続いてねv  ありがとーう!!』

「「「 ありがとうございました!! 」」」


サプライズ。

こんなことをしてもらえると思ってなかったは感激で目が潤んだ


「…ま、いい思い出になっただろ」
「神田…」
「ユウ」
「今年も1年、いい年になるんじゃねーか?」
「…うん、そうだね」


「今年もよろしく、みんな」





こんな風にみんなで集まって騒ぐことはもうできないかもしれないけれど

だからこそ今日だけは、すべてを忘れて楽しもう





「みんなにとって、今年もよい1年でありますように」





( [ Love Mistake. ] 紫陽 華恋 2周年・300000HIT御礼フリー小説 )

----------この下は切り取ってくれてかまいません----------

2007年のラブミス。年賀企画にて、年賀メールにのみアドレスをのっけて配布したフリー小説。
まあつまり企画に参加した人のみが知る隠された(?)年賀夢ですね
もう1年も経てば時効だろうと30万/2周年の方に入れちゃいます。エヘ。