初めて見た時のキミは 今にも壊れそうで






「…アク、マ…」






小さく呟かれた言葉は あまりに、強くて






「伯爵…」






空を睨む瞳は 綺麗故に、恐ろしかった。






































理 由 -前編-






































「ラビく〜ん☆」




ある日、任務から帰ってきたら、


背後から、コムイに呼ばれた(何かムカつくんは俺の気のせいさ)




「何?コムイー」


くんのお見舞い行ってきてくれないかな」




コムイは、淡々とそう述べた


俺は一瞬、思考が停止


何の話か分からない(イキナリ過ぎ!)




「…お見舞い?…お見舞いって 何さ?」


くん、昨日から風邪で寝込んでるんだ。

 まぁ、女の子みたいだけど一応は男の子だし、大丈夫だとは思うんだけど、急にぶっ倒れたもんだから…一応ね。熱もあるみたいだし

 …ってことで、教団内でも多分1番仲が良いラビくんにお願いしようと思って」


「…分かったさぁ」




ぶっちゃけ任務から帰って来たばっかで疲れてるけど、そんな事関係ない。


だって、…もとい、のコトだから 自分の体調なんて 気にしてられない。






































〜愛しのラビくんが来てやったさー」


「…誰が“愛しのラビくん”だよ、気色悪い」


「…最近、ユウに似てきた…?…」


「そう?」






は、ベッドに寝ていた。


口調や態度こそはいつも通りなものの、顔はほんのり赤く、苦しそうだ






「ソソられるさぁ v」


「それこそ気色悪いんだけど。身の危険を感じたんでお引取り願えますか」


「冗談冗談;」






軽く睨まれた。(怖いさ…)


俺は苦笑しつつ、コムイに「見舞いにはお土産でしょv」と 渡されたリンゴを剥く







「…ラビ、結構上手だね」


「そうー?」


「うん、意外。意外すぎてビックリ。いや、ほんと意外。」


「(…そんな意外意外って言われると…ちょっと傷付くさ…)」







シャリ シャリ



リンゴの皮を剥く音だけが、室内に響く



俺はリンゴを見つめているし、は剥かれていくリンゴと、剥いていく俺の手を見つめていた








「…何で、ぶっ倒れるほど放っておいたんさ?」


「…。」


は男を装ってるけど、ホントは女の子じゃん あんま無理したら…」


「…エクソシストに、男とか 女とか 関係ないじゃん」


「…」


「僕はただ、今、この刻もアクマは…、伯爵は 動いてるのに

 何もしないでベッドに寝てる事しかできないのが、嫌だったんだ

 …結局、寝てるけど」





天井を見つめて…否、睨んで は苦しそうに、けれどいつも通り強く そう、言った





「…はいつも 頑張ってる

 たまには、休憩も必要さ」


「…休憩してる暇なんか無い」





「一刻も早く、伯爵を倒さなきゃ

 もう…お兄ちゃんみたいな人を、増やさない為に」












































































三年前、の兄ちゃんは 伯爵のAKUMAに殺された


















丁度、それは俺の任務だった。





イノセンスがあるらしい場所へ行くと、AKUMAと 血を流して倒れている男と、…漆黒のロングの髪に、エメラルドグリーンの瞳をした、西洋系の 少し年下っぽい女の子





女の子の顔には、男の血であろう鮮血がかかっており、それがまた女の子の真白い肌に映えて…





今にも消え入りそうなくらいに儚くて 少しでも触れれば、壊れそうで





不謹慎なのかもしれないけれど、純粋に、そう思った





“綺麗だ” と。






数秒間その場に立ち尽くしていると、AKUMAが俺を攻撃してきた。





やっと我に返り、俺はAKUMAを一瞬で破壊した





女の子は消え去ったAKUMAを一睨みしてから、血まみれの…多分、もう息は無いであろう男に近寄った







「お兄ちゃん」







そう呼びかけながら、体を揺する







「お兄ちゃん…」







勿論、男は呼びかけに応えない。







「お兄ちゃん…」







それでも体を揺すり続けるその子を見てると、無性に胸が痛んで、俺はその女の子の腕を引っ張って、抱きしめた







「…」


「……お兄ちゃんは 死んだんさ」


「…死んで、ない」


「AKUMAっていう伯爵の兵器に 殺されたんさ…」


「…」






急に黙り込んだので、顔を覗くと、






「…アク、マ…」





小さく、そう呟いた





「伯爵…」





とても、小さな声で





強く。





何故かそれがとても悲しくて、目頭が熱くなった









その子は空を見つめて…いや、睨んでいて







その透き通ったエメラルドグリーンの瞳は あまりに、綺麗だった


















あとから、イノセンスの居所はその子だと分かり、


すぐに、体内にイノセンスを持ってるんだと分かった


つまり、寄生型の。





俺は教団のことを話した





「…黒の教団」


「……黒……」


「お兄ちゃんを殺したAKUMAや伯爵を倒すための 組織」


「…!」


「…キミも、AKUMAや伯爵を倒す 戦士になる?」


「…」







その子――の答えは 決まっていた


















――…うん」






































は、出来るだけ多く任務をこなしたいと言った






だから、女はやっぱり少し贔屓されるから、多少無理しても怒られない男に扮するよう勧めた






はそれを聞いて迷うことなく首を縦に振り、躊躇いも見せずに、長い髪を切った






服はもともと男っぽく、顔も中性的だったので、『女顔の男』と言えば通じる感じで


















「コムイ――…新しいエクソシストを 連れて来たんさ」


















は名を偽り、として教団のエクソシストとなった。












































































「…兄ちゃんだって、に無理なんかして欲しくないと思ってる筈さぁ」


「お兄ちゃんは きっと、僕を恨んでるよ

 駄目って言われたにも関わらず、僕が 家の外に出たりしたから

 外にいたAKUMAに襲われて…そんな僕を庇って、お兄ちゃんは死んだんだ。…だから、きっと恨んでる。」






目を閉じて、いつもと同じことを、は言った



多分、瞼の裏ではあの時の惨劇が 浮かんでは消え、消えては また浮かんで…







「…も、バカだな〜…」






小さく、小さく呟いた。



けれどそれは、本人にもバッチィリ☆聞こえた様で。






「…何か言った?ラビ」





ぎろりと睨まれて、俺はそれ以上、何も言えなかった。


















(だって、は馬鹿だ。庇ってくれたってことは、愛されてたってことなのに)












































































それから暫く他愛もないことを話した後、俺は部屋を後にした。


















「せめて 風邪が治るまではジっとしてろ」という言葉を残して。




























END





06/4/11

50000HIT御礼企画 斎樹 香 様リクエスト。

いや、あの…その…長くなると宣言してましたが…
前後編に分けさせて頂く事にしました
長くなりそうなんで(苦笑)

駄文ですが、香さんに捧げます…!(後編まだですが!!!)

50000HIT、リクエスト、有難うございました!

香様のみ苦情可。
(お持ち帰りの際は背景の直リンクだけはしないでくださいませ)

             By 紫陽華恋