どれだけ愚かで滑稽だろうとも僕は馬鹿のままでいい
ばたばたばた…
廊下を走る荒々しい音が聞こえて、扉に目をやればそれは5秒もしないうちに開け放たれた

「ひば、り…っ」
「…どうしたの、

理由は分かっているのに聞く僕は馬鹿だと嗤うかい?それとも卑怯だと泣くのかい?
どちらだとしても僕には問題は無いけれど、少し興味があるのは確かなんだ。
いつもと同じようにキミはソファに座る僕に抱きついてきた。香る匂いに眩暈がする

「ひばりっ…」
「…また彼氏?どうして僕のところに来るの」

いつも、いつも。
僕がキミが好きなことなんて、キミはとっくに知っているであろうに。
これはキミの情けなのか罰なのか?そんなのはキミさえも知らないだろうけど、
僕にとっては苦しみであり同時に喜びでもあるのだ

「…、ひばりは やさしいね」
「…馬鹿じゃない?」

僕が全然優しくないことなんて、キミは知っているだろう?
そう言えばキミは笑った。涙で濡らした目を細めて、楽しそうに、滑稽そうに。

「…ひばりは馬鹿だね」
「そんなの知ってるよ」

「わたしは、武だけなんだよ」

聞き飽きた言葉。
ねぇ。それでも僕は馬鹿な考えを持ち続けるんだ。

いつかキミを山本から奪ってみせるっていう、馬鹿な想いをね