「なぁなぁ!5日、一緒に遊ばねぇ!?」 絶対、OKだっていう自信があった。 絶対、断られないって。 …けど、そんな自信満々な俺に返ってきた答えは、 「ごめんね 5日は忙しいの;」 俺の期待を、酷く裏切るものだった。 HAPPY BIRTHDAY -5月5日 芥川 慈郎- 5月2日の終わりのHR後。 そう短く返事をして、俺の前からたどたどしい足取りで走り去って行く女――は、俺の隣の席のオンナノコ。 特にずば抜けて可愛いわけでも、綺麗なわけでもなく、また、ブスでもなく そこら辺にいそうな、平凡な容姿・体形。(運動神経とか切れてるし)(だから走るのも遅いんだよね) ただ違うのは、他人の知らないところで努力をしてたり、自分には何も利益はないことでも一生懸命頑張ってたり そして何より―――… 声。 ふわ、とした 透き通るような声 それがいつも俺の眠気に拍車をかけて、授業中に寝てたりすると頑張って起こしてくれようとはするんだけど、…逆効果。 余計に眠くなる。 とても、聴き心地がいいんだ 俺とは他の奴等と比べても、仲は良い方だと思う。 俺は、のこと、その…好きだし。 (恥ずかCー!!!) だから、断られない自信があったのに。 …アッサリ、断られちゃった。 「プッ フラれてやんの ジロー」 「…宍戸 五月蝿いCー ハァ…俺、誕生日だって言えばよかったかなー」 「で?どうすんだよ、お前 明日からはもうGW。 …後が無ぇぜ」 「…」 宍戸の言う通り。 もう、後が無い。 …でも、 ちら、と校舎を見やれば 「…もう無理じゃん」 彼女は、相も変わらずたどたどしい足取りで一生懸命走りながら、グラウンドを横切っていた。 *** 『なぁなぁ!5日、一緒に遊ばねぇ!?』 凄く、嬉しかった。 勿論、その日がジローくんの誕生日だってことも知っていた。 …同じクラスになって、隣の席になる前から ジローくんのことを見ていたから。 即効でOKと言いたかったけど、駄目。 本当は、忙しくもなんともない。 …ただ、やり遂げなければならないことがあるだけ。 「…さて 練習開始っ!」 お菓子作りの本を開いて 『スポンジケーキの作り方』を見ながら、作業を進める。 …そう、やり遂げなければいけないこと…それは、ケーキ作り。 運動神経も切れてる私。 実は、料理神経も切れてます(そんなの無いとか言わないでよ)(比喩ってヤツなんだから) だから練習して、美味しいケーキを作れるようになるまで、私は嘘つきになります! …もし、もし 5日が終わるまでにケーキを美味しく作れたなら。 …私は、ジローくんに想いを伝える。 だから、頑張らなきゃ! *** 「おーいジロー 起きろー 誕生日おめでとうー もう昼とっくに過ぎてるぜー 知らねぇぞー」 一階から二階の俺の部屋(この部屋)に叫ぶ兄ちゃんの声で 目を覚ました。 あまり起こす気は無さそうな、しかもその言葉の中に俺への祝いの言葉が入っていた ありえねぇ。 「(…。)」 からの連絡は、何もなし。 1回断られたのだから、当たり前と言えば、当たり前なのかもしれないけれど。 …やっぱ、ヘコんだりするわけで。 眠気半分、ショック半分の覚醒しない頭で、俺は階段を下りていった ――母ちゃんの言葉を 聞くまでは。 「ジロー誕生日おめでとう! あのね、あんた宛に、差出人不明の手紙がポストに入ってたのよ 書体からして、女の子だと思うんだけど…彼女?」 何故か、確信したんだ それは、からだって。 絶対に、からだって。 「貸してっ!」 「ハイ」 無造作に渡された 綺麗な封筒に入れられた手紙を取り出し、本文を読む 『ジローくんへ ジローくんの家の近くの小さな公園で3時まで待ってます 』 ソレを読んで、反射的に時計を見た 「(2時55分…!)」 何でもっと早く起こしてくんなかったんだよ兄ちゃん! 心の中で叫びながら、家を飛び出した。 部屋着なんて関係ねぇ 早く行かなきゃ、が帰っちゃうんだよ…! *** 5月5日、午前10時 10回目の正直。 やっと、ケーキ作りに成功。 「あ…出来ちゃった…!」 出来たと同時に思い出した、自分の決意。 「こ、告白するんだ…私…」 途端に不安になって、でも ケーキはしっかりとラッピングして。 「…期限を決めておこう」 確か、ジローくんの家の近くに、小さな公園があった筈。 ブランコと滑り台とベンチだけの。 …あそこで ジローくんを待つことにしよう。 「時間は…3時くらいが良いかな」 手紙に短すぎるくらいの文章を書いて、自分の姿や髪型をチェックし、家を出た *** 3時1分前。 公園に滑り込みセーフ。 「じっ、ジローく…」 「っ!!!」 困ったような顔をして駆け寄ってくるの姿を見た瞬間、なんだか無性に愛しくなって、思わず抱きついた は言葉にならない声を発しながらも、俺を離そうとしない 「…あの、ね この間は、断っちゃってごめんなさい」 「マジショックだったC」 「…; お誕生日 おめでとう、ジローくん」 俺から体を離し、持っていた箱を俺に差し出した ソレからは、甘い匂いがする。 …ケーキだ 「…私、運動神経だけでなくて、料理の神経も切れちゃってて… でも、ジローくんに手作りのケーキを渡したくて、練習して… もしかしたら5日に間に合わないかも、と思って断ったの …受け取って、くれますか?」 不安そうに俯きながら、上目遣いっぽく俺を見て問う …そんなの、受け取るに決まってるじゃん 「サンキュー!めちゃくちゃ嬉Cー」 ニコッて笑ったら、は顔を真っ赤にして、俯いた …どしたの? 「ほ、ほんとは ケーキが成功したら、言おうと思ってた事があって…」 「…」 「わ、私」 「俺、が好きだよ」 「ジローくんが好、ってぇえええええ!?」 驚いたように叫んだに、自然と頬が緩んだ。 耳まで真っ赤にさせて、潤んだ瞳は俺を映していた 「好きだよ、」 もっかい言ったら、は何か諦めたように息を吐いてから 「…私も、ジローくんが好きです」 俺の大好きな声でそう言って、俺の胸に顔を埋めた。 *** 『俺、が好きだよ』 ほんとはね、分かってたんだ ずっと、自惚れてたんだ 私が起こそうとすると、いつも余計に気持ち良さそうに眠ることとか、 今日、遊び…デートに誘われたこととか 自惚れないわけにはいかなかった。 きっと、貴方もそうだったんだよね? 私が、『ほ、ほんとは ケーキが成功したら、言おうと思ってた事があって…』そう言った時 貴方の顔を盗み見たら、 すっごい、嬉しそうに目を細めて 私を見ていたから HAPPY BIRTHDAY ジローくん。 END 06/5/5 ジローちゃんおめでとぉおおおおお!!!! なんか微妙な終わり方ですまんね!ってかジロー何か格好良いね 私のジローちゃんはもうちょい可愛いような。 でも実は普通に男の子〜なジローちゃんが大好き。( 当日にUPできた…良かった…!(夜だけどね!) 私はずっと貴方のことを二番目に愛し続けます(一番は不二様なのよ)(因みに三番は跡部) 次は…薫ちゃんですね、11日ダ! かおりんも好きよ。30番以内くらいには(何) |