放課後、下靴に履き替えるため靴箱を開けたら。 『 今日の夜、零時丁度に礼拝堂へ来てください 』 小さな紙切れが 入っていた。 HAPPY BIRTHDAY -5月27日 観月 はじめ- 「( 零時…?そんな時間に寮の外をウロつくなど… )」 心の中で悪態を吐きながらも、行かない、という選択肢は僕の中には存在しなかった。 なんたって、呼び出し人が…自分の恋人なのだから。 コーラス部に所属し、自分がクリスマス礼拝時に賛美歌を独唱する時に指導してくれた女性。 同学年でありながら、どこか大人びている、誰よりも愛する彼女。 ―――…それに。 ( のことだ…。僕が来るまで待ってるつもりなんだろう。その方が危ない ) 深夜遅く。 幾らこの学校の校風が“キリスト教の教えに基づいた『愛情と真実に誠実であれ』… 博愛・奉仕・慈善の精神をもって心身ともに真の自由を謳歌する”だとしても (※20.5巻参照) 不埒な輩はやはり居るものだ。 危ないことこの上ない。 …それに、呼び出しの意図も分かっている。 ( 今日は5月の26日。…つまり、僕の誕生日の前日。んふ、お見通しですよ、 ) それしかないだろう。 …まぁ、礼拝堂で何をするのか等までは分からないのだけれども。 午後十一時四十五分 「…そろそろ行きましょうか」 同室である赤澤が既に寝入っているのを確認し、起こさないように静かに部屋を出る 暗い廊下を歩きながら、今日のことを考えた。 「( そういえば、…今日は全然僕の周りに寄ってきませんでしたね… )」 少しでも離れておいて、喜びを倍増させたいのだろう。 そう自己完結し、スリッパから下靴に履き替え、寮を出た ( 五十五分…そろそろ入っても…、いや のことだ…キッチリが良いんだろう ) 本当にキッチリにしてやろうと携帯から 117、つまり時報にかけながら時間を確認する ( 9 8 7 6 5 4 3 2 1... ) ―――キィ… ゆっくりと、礼拝堂の扉を開けた。 目に入ってきたのは、真っ暗な堂内に揺らめく蝋燭の灯。 「 Happy birthday to you Happy birthday to you Happy birthday dear Hajime Happy birthday to you... 」 綺麗な透き通った歌声で謡われたのは間違いなく自分の誕生日を祝うもので。 歌が止んだ刹那、コツ コツと靴音を鳴らし、愛しい彼女が僕の前へ歩み寄ってきた 「誕生日おめでとう 観月」 暗闇に蝋燭の灯が揺れる中見えた微笑みは、イヴよりも、聖母マリア様よりも、何より、誰よりも美しかった。 「……」 「?観月?」 「…ありがとう」 「…うん」 嗚呼 神よ 僕と彼女を出会わせてくれたこと 心より感謝いたします 願わくば イヴとアダムの様に 楽園を追放されようとも、この先苦難の生活が待っていようとも。 ただ、と2人で過ごせますよう... END 06/6/1 マジごめんなさいみじゅきィィィイ! 愛はあるのよ!あるんだけど!(言い訳) そもそも修学旅行と被ってるって勘違いしたことが駄目なのよね。 誕生日おめでとうでしたっ! 次は…乾?蓮二さん?あれどっちだっけ…一日違いだもんね、確か…うーん? |