白鯨を見せてくれたお礼に、

今日は、一緒に出掛けようか









星と魔王のそんな休日    with  不二 周助









が不二を誘ったのは、関東大会の、対氷帝戦が終わった直後だった

誘った理由は、不二がシングルス2で見せた白鯨

初めて見たその技に、楽しませてもらったからだと、は笑いながら言った

その笑みは、いつもとは少し違う、少々無邪気さを感じさせる笑顔だった気もする

そんな訳で、今のは不二と一緒に街の中

特に何をする訳でもなく、目的もなしに歩いている

「ん〜・・・・・・ひっさびさの休日〜!!」

「クスクス、そうだね」

「あ〜・・・なんか、いつもより疲労が・・・・・・」

「それはあれじゃない?芥川、代理部長に決まったから」

「・・・・・・・・・・・・やる事多過ぎんだよ、めんどくせ〜」

首を左右に倒しながら、が言う

すると、ボキボキと音を立てる、首の骨

それに苦笑を返しながら、不二は口を開く

「まぁまぁ、雑務はほとんど大石がやってくれてるんだから」

「だとしても、海堂と桃城がなぁ・・・・・・」

2人の仲の悪さは、暗黙の了解となっている

もそれはよく知っていたし、部活中に喧嘩をしても、ほとんど放置していた

だが、立場が変われば話は別

今までは傍観している方だったが、今のの肩書きは代理部長

ともすれば、2人の喧嘩を放置しておく訳にはいかなくて

いつもいつも、gravity impact+最恐真っ黒オーラを使用している

平気な振りをしているモノの、2つをセットで使うのは結構疲れるのだ

事実、昨日の部活では、は右手を1度も使わなかった

「クスクス、でも、手塚が居た時以上に、皆部活に集中してるのは確かだよ」

「そりゃ、彼奴の抜けた穴をカバーしようとしてるからな」

「芥川・・・君もね?」

不二が、小さく呟いたその言葉

対するは、それに片目を眇める様にして笑うだけ

まるで、言わなくてもわかっているだろうと言いたげに

すると、不二もそれに笑みを返す

ほんの少し、小さく頷きながら

対氷帝戦での一件後、仲良くなったと不二

まぁ、以前からある程度は仲良しではあったが

「現役部長直々に任されたんだ。中途半端じゃ格好がつかないだろ?」

「クスクス、君らしいね」

そんな話をしながら、ブラブラと街中を歩いていく

そこでふと、の目にある店に留まる

の目が留まったのに気付いたのか、不二がその店を見る

見ていたのは、スポーツショップ

「ちょっと寄って良い?」

「もちろん。僕も、丁度欲しい物があったんだ」

「ふぅん・・・・・・何?シューズとか?」

「ううん、グリップテープ。もう少しでなくなっちゃうんだ」

何気ない、不二の言葉

その言葉にが瞳を一瞬キラリと輝かせた事に気付かず、不二は店の中へ

不二の後を追い、も店内へ

店内はそれなりの広さを持ち、様々な種類のグッズが置いてある

迷う事無く、はテニス用品売り場へ

右から左へと棚を流し見、気になったモノを手にとって、感触を確かめる

だが、どうやらお気に召さない様子

軽く眉を寄せ、棚へと戻す

「う〜ん・・・・・・カウンターパンチャーだし、もうちょい握りやすいのが良いよなぁ・・・・・・」

難しい顔をしながら、グリップテープと向き合う

ふと、そこでグリーンシャドウの色をしたグリップテープが視界の隅を掠める

まるで引き寄せられるかの様に、それを手に取る

右手でそれを握りながら、左手は顎の方へと向かう

何度かグリップの感触を確かめ、不二の姿を探す

「不二〜」

「うん?何?芥川」

「ちょっとこれ握ってみて」

言うが早いか、持っていたグリップテープを投げる

反射的にそれを掴むと、感触を確かめる不二

少しの間それを続けていたかと思うと、パッと顔を上げる

「うん、良いかも」

「だろ?俺の見立ては間違いねぇの♪」

ニコニコと笑いながら、は言う

機嫌の良いに、不二は笑みを返す

レジへと向かおうとする不二の背に、の声がかかる

「Stop. May T have you wait just for a moment?」

(ストップ。ちょっと待ってもらっても良い?)

「え?何が・・・・・・・・・って、え、芥川?」

トコトコとが近付いてきたかと思うと、不二の手の中からグリップテープが消える

驚きに目を見開く不二を余所に、はレジの方へ

肩越しにチラリと振り返り、グリップテープを見せながら一言

いつもとは違う、柔らかい笑みを浮かべながら

「白鯨見せてくれたから、そのお礼っ♪」

一瞬、不二の思考が停止

不二の動きが止まったのを良い事に、はさっさとレジの方へ

途中で、偶々目に留まったリストバンドを手に取る

自分の目の色と同じ菖蒲色に、バタフライイエローの色をした糸で、星の刺繍が入っている

何故かそれが、酷く気になった







別に、自分が『Polestar』だからではない

何が悲しくて、背負いたくなかった呼び名を、持たなくてはならないのか







ならば、何故がそれを手に取ったのか

その理由は、たった1つしかない

「Are a father and T watched?」

(父さん、俺を見守っていてくれるよね?)

ギュッと、1度強くリストバンドを握り締める

まるで、祈るかの様に

今は亡き父親に、この声が届く事を望むかの様に

ほんの少しの間握り締め、今度こそレジへと向かう

代金を払い、不二の元へ

紙袋の中に入っていたリストバンドを取り出す

それをさっさと右手首にはめると、紙袋を不二に渡す

「ほら」

「あ・・・ありがと・・・・・・でも、本当に良いの?」

「ん?全然大丈夫。それに、このくらいの金はどーって事ねーもん♪」

「君って・・・・・・実はお金持ち?」

「ま、ある程度は」

怪訝に眉を寄せる不二に、からりとした笑顔を返す

その無邪気とも言える笑顔に、不二は言葉を飲み込む

仕方ないなと小さく呟き、ありがとうと言いながら笑う

「でも、どうせならこの使い心地を見てみたいな」

「・・・・・・それって・・・・・・」

要するに、使い勝手を試したいから試合をしろと言っているのだ

極限までに爽やかな笑顔を浮かべる不二と、極限までに呆れた顔の

そんな2人の不思議な睨み合いは、しばらく続いた







この後、6セットにも及ぶテニスの試合が始まろうとは、

その時のには、全く予想だにしなかった









作者:「何故だろう・・・・・・・・・?」

不二:「何が?」

作者:「いや、2人って何でこんなに仲良しの様な、悪友の様な感じなのかなぁって思って」

不二:「クスクス、さぁ、どうしてかな?」

作者:「ま、それはともかく・・・・・・楽しんでもらえたかな?」

不二:「もちろん、芥川と6セットも試合出来て、凄く嬉しかったよ」

作者:「本人は、3セット目から文句言ってたけどね(苦笑)」



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相互サイト「l'interstice du reve et la realite」管理人の斎樹 香様が相互リンク記念に書いてくださいましたvv

(捕捉を付けさせて頂きますと、斎樹様が自サイトで書いてらっしゃる連載の男主人公設定です)

こ、こんなステキなもの…っ!
有難うございま…す…!!

ありがたく頂戴しておきますvv


ありがとうございましたっ!

    06/03/10/紫陽 華恋