「…暇」
「そげんこつ言わんでも分かっとう。ちゅーか、俺も暇」
「暇ー」
「俺に訴えられても困る」
「…ね、いちゃこらしようよ」
「っ、」

ウーロン茶を噴出しそうになる彼を見て、私は薄く微笑んだ。





[ 2つのお日様、私のお日様。 ]





「何言って…っていうより、何考えて…」
「…いつも考えてるんだけど。私、いつでも雅治に触れてたいよ」

退屈だという感情はどれだけ強力なのだろうか
いつもは恥ずかしくて言えない台詞が、ポンポン言える

「…知らなかった?私、スキンシップ大好きの、常に人肌恋しい性格なんだ」
「…。」
「特に好きなのは、後ろから…いや別に前からでもいいんだけどね、抱きしめられるのが好き」

唖然としている雅治を見て、私はやはり微笑んだ。


…ここは、私の家。んでもって、私の部屋。
暇で暇で何もすることのなかった私たち。雅治は私の部屋にあったじゃんぷコミックス、
『 テーブルテニスの王子様 (笑)』を興味なさそうに読んでいた。
私は、それをただ眺めてるだけ。…そんなの暇すぎる。

ただでさえ最近雅治に触れてなかったからか。
人恋しさ…というよりは人肌恋しさが爆発して、私が本音を言うような状況になってしまったのだ


「雅治ー」

未だに放心してる雅治に近づいて、正面から抱きついた
それにより、彼も我に返ったみたいだ。戸惑いがちに背中に腕を回し、抱きしめ返してくれた

「…、いつもそんなこと考えちょったん?」
「うん」
「何で言うてくれんの」
「恥ずかしいじゃん。なんか、変態みたいだし」
「…。じゃあ、俺も変態かの?」

一瞬だけ雅治の抱きしめてくる腕がギュ、って強まった
雅治の言葉に、私はただポカンと口をあける。アホみたいに。
雅治は見えてないだろうけど、私今かなり、アホ顔だ。

「俺もに触れてたい。」
「…」
「スキンシップ大好きじゃ」
「それは知ってる」
「…。そうけ。
 ―――んー、のご要望でもあるし、いちゃこらしますか」

仁王の楽しそうな声に、なんとなく寒気を感じた
な、何!?

「って、ちょ!?服の中に手を入れないで下さい!私の言ってるいちゃこらはこういうことじゃないー!」
「…じゃあどういうこと。」

服の中…、胸の真下で止まってる手は、服の中から出してはくれない。
くそ、盛っちゃったか!(ェ

「こう…なんていうの?ほのぼの〜といちゃこらしたいわけ。そうだね、キスはまだいいかな
 ディープは駄目だね、エッチだってもってのほか。ほのぼのしたいんだっ!」

だってさ、こんなにお日様あったかいんだよ!?明るいんだよ!?
こんなお日様の下、エッチだなんて…!( 少しは恥らえ )

「……つまらん」
「あーん!?」

雅治は本当に残念そうな声を出す。
顔は見えないけど、すっごいショボんとしてるんだろう。声で分かる。
…。…って、駄目駄目!これは詐欺師の罠よ!乗せられちゃ駄目だわ!

「…。」
「…。」
「…。」
「…。」

…ああ、駄目。駄目だ私
雅治には、弱い

「…私の望むいちゃこらしたあとだったら、雅治の望むいちゃこらもしていいから」
「!」
「ね」

そう言ったら、雅治は「しょうがないのう」と言って私の身体を開放すると、私の身体の向きを変え、後ろから抱きしめてくれた

「あー……幸せ」
「…そうか」

雅治に体重を預けて、彼の全身を感じる
…大好きだ、マジで。

「大好きだぁああああ…」
「ククッ、知っとうよ」
「…」
「…俺も好いとうよ?そんな顔で見るんやなか」

そう言って雅治はちゅ、と触れるだけのキスを私の唇へ。
…恥ずかしい!
なんか、キスなんて今更なんだけど、ある意味ディープとかエッチなんかより、恥ずかしかった。


頭に擦り付けられる、雅治の頬が愛しい。
ううん、全部愛しい。全部大好き。

今こうして体中があったかいのはお日様だけじゃなくて、雅治もいるからなんだって、本気で思った


…私の本音もぶちまけちゃったことだし、これからは堂々といちゃこらできそうだなぁ…

明日からの日々を思い、私はこっそり微笑んだ。










「…ん、じゃあ今から俺の望むいちゃこらぜよ」

「!!」