いとこいし君へ
自室で父の置いていった書物を読んでいると、部屋の真横にある裏庭からガサガサと草を掻き分ける音が聞こえた 私は風のせいだろうと思い裏庭と部屋とを隔てるふすまを少し見つめた後、すぐに書物に視線を戻した 「…さん、さん」 「っ!?…え、丸井、様?」 けれども、そうもいかなかった。 聞こえた声が、愛しいあの方の声だったからだ。 私はばっと立ち上がると、ふすまを開け縁側に出る そこには優しく微笑む、愛しい彼がいた。 「そうだぜぃ…っと、そうですよ、さん」 「普段通りにしてくださいといつも言っているのに…」 「そういうわけにはいかないんです…さん。俺、…私は、どうしても最後の一線を越えられない」 私と、彼―――丸井様の家は、代々敵対してきた。 なのに、私と彼は出会い、そして…恋に落ちてしまった。 お互いの気持ちを知ってから、丸井様は時々ひっそりと私に会いに来てくださる 何故、愛し合っているのに陽の元で彼と会うことが出来ないのか。抱き締めあうことができないのか。 「…私は神を恨みます。私を、この家に産み落としたことを。」 「そんなことを言わないでください。逆を言えば、我が丸井家と敵対していなければ知り合うこともなかったのです」 「…それでも私はもう一度、太陽の下で輝く 貴方を見たい…」 散歩に出て、丸井様と出会ってから、父上と母上は私に一切の外出を禁止した 丸井様を太陽の下で見たのは あの時のみ。 だから、彼を、明るく輝く彼を見たい。そして…触れたい 「愛しています、丸井様…」 「…私もです、さん」 ひしと、抱き合う。 ああ、あたたかい。そして いとしい。 「どうして、私たちは…愛し合うことが赦されないのでしょう」 「そりゃ…敵対しているからです」 「ならば、なぜ敵対するのでしょう…」 「…」 過去に起きた事件が原因だと聞いている。でも、詳しくは知らない。 それでも、私はその事件が憎くてたまらない。それがなければ、私たちは。 「…さん」 「はい…?」 彼の、私を抱き締める力が、少し強まる 私は彼の胸に顔をうずめながら、返事をした 「私と共にあるために、すべてを捨てる覚悟はありますか」 「…え……」 「きっと、辛い。金もなく寝床もない」 「…」 「それでも…家柄も、夢も、友人も、家族でさえも捨て 私と共に行く 強い想いは ありますか」 もちろん、驚いた。 けれど、私はその言葉を きっと、心のどこかで 待っていた。 「…もちろんです。あなたとなら…全てを捨てられる。どこへでも行ける」 そう言って微笑むと、彼は嬉しそうに微笑み、そして、 「…嬉しいぜぃ、」 そう言うと、私から体を離し、左手で、私の右手を握った 「そうと決まれば早速行くぜぃ!」 「…はい!あなたとなら、どこまでも…」 いとこいし君へ。 あなたとなら いつまでも、どこまでもついてゆきます。 だから、ずっと ずっとこの手を、握っていてください… 「…―― 、っ!」 「っひゃおう!」 「ったく、爆睡しすぎだってーの。もう放課後だぜぃ」 「…丸井様…?」 「はあ!?何きもいこと言ってんだよお前」 目の前には、ブン太。正真正銘、立海大中3年テニス部の、丸井ブン太。 「( なにあれ…夢!?ロミジュリみたいな…ああもう恥ずかしい! )」 ブン太のことが好きという気持ちが、夢にまで至ってしまったのか。恥ずかしすぎる、 「( あ、でも ロミジュリっぽかったけど、ロミジュリと決定的に違うのは… )」 「ー早く行こうぜぃ、今日クレープ食って帰るんだろぃー」 「あ、うん!」 ただひとつ ロミジュリと違うところといえば、 愛し合う2人は「死」なんていう結末でなく、かけおちという名の幸せの選択としたということ… |
撃 沈 。なんかもう申し訳ないっす…特に夢オチなあたりがorzごめんなさいorz笑