ぶらり、ぶらり ソファではなく木の椅子に座りながら、足をぶらつかせていた 向かいには、ソファに座り怪しい微笑みを浮かべながらこちらを見る骸 ぶらり、ぶらり 足は、揺れる 「去年のさ、春に 犬ちゃんと千種くんと、4人で花見行ったの覚えてる?」 あたしは骸の目どころか顔さえ見ずに、骸の長い足を見ながら口を開いた 「ええ、もちろん」 「すっごいさ、楽しかったよね。桜 すっごい綺麗だったしさ。桜吹雪なんてさ、なんてーの?幻想的?みたいな」 「おや、がそんな美しい言葉を使うのは珍しいですね」 いつもなら文句を言う厭味に今日は何も返さず続きを話す 骸は別段驚いた様子でもなかった 「夏もさ、4人でプール行ったじゃん。はしゃいだじゃん。すっごい楽しかったじゃん。骸意外に筋肉だし」 「クフフ、貴女はそれに見惚れていましたね」 「秋は2人だけで紅葉見に行ったじゃん。綺麗だったけどアンタ急に盛るから生まれて初めて青姦しちゃったじゃん。最悪」 「クフフフフ。貴女の身体も悦んでいたではないですか」 「死んでよ」 これには文句(?)を言わずにはいれなかった。人が嫌がってんのに、強姦に近いカタチでヤりやがって。 ( ていうか、貴女の身体…ってことは、心は喜んでなんかないって分かってるんじゃん…。 ) そこまで口に出すことはしなかったけれど、とりあえず骸の足を睨んでから、言葉を続けた 「冬は4人どころかみんなで雪合戦やったじゃん」 「ええ」 「すっごい楽しかった。もういっかいくらいやりたかったよ」 「今年の冬に、またやればいいでしょう」 「…、ね、骸」 「なんですか?」 ぶらり、ぶらり 足は、一定のリズムで揺れる 「アンタってすっごいムカつくし変態だし、きもいけど、」 「喧嘩を売っているのですか?クフフ、喜んで買いますよ」 「だけど…、好きだったよ、すっごく。」 「…ええ、………?」 骸は短く言葉を返してから、少し考えるように首を傾げた( 気がする )( だってあたし足しか見えないし ) 「…好きだった?」 「うん」 「“好きだった”?」 「うん」 「どうして過去形なんですか、」 骸の気配が変わる 怒りのオーラが、にじみ出る 「もう過去にしよう、全部 全部」 「」 「あたしはもう骸と関係ない。骸もあたしと関係ない」 「…それは本気で言ってるんですか?」 地を這うような 低い声 恐怖を覚えないはずがなかったけれど、あたしはもう、それさえも押しのけてしまえる程、決意を固めていたのだ 「本気だよ。六道さん」 ガッ 骸の両手があたしの首を掴んだ それでもあたしは骸を見ることもせず、ただ近付いた足を見続ける ぶらり、ぶらり 揺れる足が、ときどき 骸の足に当たる 「そんな戯言、今すぐ取り消しなさい」 「嫌よ」 「殴りますよ」 「殴ればいいじゃん」 「犯しますよ」 「犯せば?」 「殺しますよ?」 「殺してくれるの?」 ぎり、と 骸の両手に力がこもる どうやら、らしくもなく動揺しているらしい。 それが、あたしのことを好きなのだと叫んでいるような気がして 嬉しくて、もう それで満足だった この時あたしは初めて骸を見た 揺れるオッドアイが 綺麗で。 「ねぇ骸。殺してくれるなら殺してよ」 「、」 「ねぇ 殺して?」 あなたの手で あなたをあたしの永遠にして 「愛してたの 愛してたの」 「…っ」 「愛してたんだよ、骸」 「…っ」 ぶらり、ぶらり 揺れる足 「むく、」 ぶらり、ぶら り 静かに、ゆっくりと。 それはもう 揺れることはなかった そう、愛していたの 愛しすぎて、恐くなったんだよ。 これ以上貴方を愛すとどうなるか、何も想像できなくて。 それくらいなら死んだほうがいいと思った 貴方に殺されるほうがいいと思った ねぇ骸 愛してたよ。 「僕も、愛していました…」 あなたに殺してもらうことで あたしの永遠が貴方であるように あなたの永遠もあたしであればいい。 待ってるよ、貴方のこと。 貴方にとっては知りすぎた地獄の底で いずれまた貴方が訪れることを、ずっと 待っています 木の椅子に腰掛けて、また ゆっくりと足を揺らしながら。 |
By [Love Mistake.] 紫陽 華恋 (200000HIT企画お題作品)