たとえばこれがすべて夢だったとしたら。

夢はなんて幸福で、現実はなんて残酷なのだろうか。






群れる奴らは嫌いだ。そんなことは、弱い草食動物がすることだから。
女子なんてものは、男子以上に群れる。
ただ、男子ほど大人数では固まらないし、
女子なんていう草食動物以下の人間を咬み殺すのも気分は良くないので、大抵放っておいた。
それでも僕のことを恐がる女子たちを、僕はどうしようとも思わなかったし、
興味も何もないしで、このまま一生干渉しないままかもしれないと思っていたけれど。

ある日、見つけた、一人の少女。


「ああ、えーと、雲雀くん、ですよね?こんにちは」


僕を恐がらない女子なんて初めてだった。
だからもうこの時点で僕は十分驚いていたのだけれど、


「キミ、誰?」
「あ、ごめんなさい。わたし、 って言って、1組にいるんです。同級生ですよ」
「…
「うん、そう」


ふわ、と

馬鹿馬鹿しいと、自分でも思うけれど。本当に、


花が咲いたように 笑うから


一瞬、時が止まったかのような錯覚さえ覚えるほど。
その微笑みは、何て言えばいいのだろうか。とりあえず、焼きついたのだ、心に。

それと同時に生まれた感情に、気づかないはずも無くて、



「ん?」
「今度、応接室に遊びに来なよ」
「あ、一度行ってみたかったんですよ。今日の昼休み、お邪魔していいですか?」
「いいよ」


僕なりに、一生懸命アタックしたつもりだったのだけれど。
天然なのか何なのか、は依然態度が変わることは無く。

が他の男子と話す度
僕が口説いても反応が無い度に

キリキリと、僕の胸が痛い痛いと悲鳴を上げていた


辛くて辛くて仕方が無い。

それでも、

それ以上に、



が愛しくて、仕方がなかった



だから遂に耐え切れなくなって、それを言葉にしたんだ


「好きだよ、


応接室に、2人きり。
ソファで向かい合い座っていた

珈琲を啜る中、何の前触れもなく言った僕の言葉にが返した言葉は、


「 知ってます 」


ばっ、と の顔を見る

驚きなんてものは覚えなかった
寧ろ、やっぱり。という気持ちと、じゃあ、キミは?という気持ちが溢れ。


は微笑んでいた。
僕が恋に落ちた、あの笑みを、浮かべていた。


「…雲雀さん」


が立ち上がり、そのまま腕を伸ばし、その白い手で、僕の目を目隠しした



視界を覆う、キミの手が、ほどよく冷たくて 気持ちがいい。



そんなことを思っていると、一瞬だけ唇に何かが触れて、離れた。

それが何かを認識するには少し時間がかかって、認識するまでの間も、目隠しはされていて。


す、と手がどけられて、



その先にいたのは、少しだけ恥ずかしそうに、それでも嬉しそうに微笑んだ、だった



その、目隠しをされてから  手がどけられる間の僅かな時間は

まるで、短いひとつの夢だったような気がする


けれど今僕の目の前で微笑むキミは夢じゃない、だから


「好きだよ」



一瞬の夢でもいい。


僕は身を乗り出して、彼女の唇に僕のそれを落とした。





視界を覆う、あなたの手
( この手はきっと、夢じゃない )

よく分からん…!ごめんなさい…orz