夢はまるで行方知らずの恋のようで、
いとも簡単に、あたしの心、体、すべてを 占領する。











「おっはよー!」


いつもどおり、朝練のため7時に部室に到着(朝練は7時15分から1時間だ)。
いつものように、部室には真田や柳、柳生などの真面目メンバーは既に集まっていた。
赤也はいつも通り遅刻かな〜なんて思いながらふと部室を見渡せば、珍しく赤也がもういた。
しかも着替えも終わってる。


「おはよっス」
「今日は早いねえ、赤也っ!」
「へへっ、でしょ?」
「何得意そうにしとるんだ。俺が迎えに行かなければどうせまた遅刻していたのだろう」
「げっ!真田副部長、それは言っちゃ駄目っスよ〜」


そんなかけあいを見ながら、あたしは部室の自分のロッカーのところに鞄を置いた
朝練のときはあたしは着替えなくて良いので、制服姿のまま朝練の準備(ドリンク作り)。
ボトルの入ったカゴと粉末のスポーツドリンクの素を持ち、水呑み場へ向かうため部室を出る、と。


先輩っ!俺手伝うっス!」
「え、赤也?まじで?ありがと!」
「任せてくださいよ〜」


そんな軽口を叩きながらすぐに水呑み場へ到着し、ボトルを洗う作業から。
2人で並んでボトルを洗いながら、あたしは自然と鼻歌を歌っていた。
そんなあたしの様子に赤也が気づいて、ボトルを洗いながらあたしの顔を覗き込む


「…なんか先輩、今日やけに機嫌いいっスね」
「っはは、分かる〜?」
「分かるっスよ!なんか、全然違いますって」
「そうかなー。まあ、今なら赤也の頭にあるワカメでも食べれそうなくらいは機嫌いいかな
「はあ!?アンタ何言ってんスか!」
「冗談冗談。」


そんなことを言いながらボトルをすべて洗い終えると、次はドリンク作り。
適量の粉を入れて赤也にボトルを渡す。そして赤也が適量まで水を注ぐ。その流れ作業。
それを繰り返しながら、赤也がまた口を開く


「んで、なんかいいことあったんスか〜?」
「んーまあねー」
「え、なに!?朝食が自分の好みだったとか?」
「違う違う!夢見たの」
「は?夢?」


赤也は水を入れたボトルを振り中身を混ぜながらあたしに振り返る
あたしは赤也にまた次のボトルを渡しながら、「うん、夢」と返した


「自分の好きな食べ物がいっぱい出てきたとか?」
「ちがうー」
「ぜんぶのテストで満点とった夢とか?」
「ちがうよー」
「じゃあ…


     ―――――…俺が出てきた とか?」


ぽと ん


赤也のあまりに不意打ちな言葉にあたしは思わずボトルを落とした。図星だったから。
それに気づいたんだろう、赤也自身も少し顔を赤くしながら、落ちたボトルを拾う


「…俺の、どんな夢 見たんスか」
「え、いや あの…」
「まあ、どんなのでもいいけど」
「( ええー!?聞いといてそれ!? )」


赤也は落としたボトルを軽く洗うと、あたしにそれを突き出して、


「アンタが望むんだったら、俺 なんでもしますよ」
「へ?……ええっ!?ど、どういう…」
「……アンタ、鈍感?」


突き出されたボトルを条件反射で受け取ると、その腕を赤也に引っ張られ。
その、あたしより1年遅く生まれたはずの逞しい胸板があたしを受け止める


「 好きって言ってんだよ 」

「…!」


耳元で囁かれた言葉にまたボトルを落としそうになるけど、今度は頑張ってこらえた。
ってそうじゃなくて。今、なんて。うそ。


先輩…」
「っあか、」
「黙って」


近付いてきた顔にあたしはただ真っ赤にして固まるばかりで、思わずぎゅっと目を瞑る と。


「朝練始まるぜよー赤也クン、チャン?」


「「 っ!! 」」


計ったように仁王登場( ってか絶対見てた。このタイミングになるまで見てたんでしょ! )。
あたしたちはバッと離れると、2人して真っ赤な顔で仁王を見た。
仁王は満足そうにニヤリと笑ってから 「すぐに来んしゃい」 と残して去っていく。


「…くそー…タチ悪…」
「…。」


ああ、まだ顔が熱い。
そんなあたしの様子に気づいたのか、赤也はニヤ、と笑いあたしの頬に、キス して。


「!!?」
「俺もう行かなきゃだから手伝えないっスけど、あとちょっと頑張ってくださいね。
 あと…、アンタ今日から俺の彼女ね」
「っ…!」
「早く終わらせて来てくださいよー待ってるんで!」


そう言って、笑顔で彼は去っていった。


…確か、今日夢で見た彼も、同じようなことを 言ってたような…


「( …予知夢!? )」


そんな考えが頭の中をグルグルしながら、とりあえずドリンク作りを再開した。
今日からあたしは、赤也の彼女。そして赤也は、あたしの彼氏。
にやけるのをこらえながら作業していたらその表情はとてもきもかったと偶然通りかかった友人Aさんは仰いました。








リクの赤也→ヒロインってよりおもいっきり⇔なんだが(笑)