間違っていると分かっていた。
気持ち悪いとさえ、思った。
許されない思いだということも、すべて  分かっていたのに。










「光ー晩御飯やってー」
「ああ…今行くわ」

ひとつひとつの言葉さえも愛しくて、しっかりと耳に焼き付ける
微笑んだその笑顔が、あまりに愛しかった。

「光、、今日テストやったんやろ?どうやったの」
「光はどうせバッチリできたんやろ?…ウチはまぁ、それなりに」
「それなりって何やの」
「そこは聞かんといてよお母さん」

好きで好きで好きで、大好きなのに


俺とお前は、兄妹。


一番近くて遠い存在に、幾度涙すればいいのだろう。
いや、涙することでこの感情が許されるのなら、俺は幾らでも涙を流すのに。
どうやってしてでも、この感情が許されることは 無い。

「どう?入試大丈夫そう?光」
「…当たり前やろ」
「せやけど、やっぱり心配やわぁ。京都とは言え、寮に入るのなんか…」
「大丈夫やて言うとるやろ。そない心配せんでえぇよ、母さん」
「まあ、光やから大丈夫やと思うけど…」

光やから。
皆、俺とを比較する。
俺の方が成績もいいし、運動もできるし、外見的にも秀でているから、だろう。
でも、俺はそうは思わない
は全てにおいて平々凡々であるけれど、友達は多いし、優しいし、笑った顔は可愛いし、雰囲気も、とても穏やかで。
学校で一匹狼なんて呼ばれてる俺なんかよりは、うんといいと思う
…知らぬ間に、贔屓目なのかもしれないけれど。

「頑張ってな、光」

が、微笑む

―――俺は、その笑顔を守るために京都へ行くのだ。
離れたくないなんていう、俺のわがままを押し殺して。のために。

…違う、本当は俺のためだ
このままじゃ、いつ俺の理性が壊れるか分からない。
部屋自体は違うとはいえ、隣だし、同じ屋根の下。俺だって、男なのだから。
をボロボロに傷つけて、嫌われるのが怖いだけ。自分のためなんだ、本当は。

「( ボロボロに壊してやりたいと思うのも、本当やけど )」

ボロボロに傷ついて、俺だけを想えばいい。
それが例え恐怖からだとしても、兄以外として…、1人の男として 見られるのなら。

でも俺は臆病だから、
    そうなる前に離れてやる。

「…
「ん?何?」

好きや

「…」
「…?」

お前のことが、好きや

「……なんでもない」










入寮当日


「ほんまに合格できてよかったなぁ〜。学校もえぇとこみたいやし」
「何今更なこと言うとんねん。合格発表なんか2月中旬やったのに」
「実感なかったんよ」

早朝、荷物の最終チェックをしながら母さんと父さんと、3人で言葉を交わしていた
は、まだ 寝てる。

「けど、ほんまにに何も言わんと出ていくんか?光」
「…腐っても俺らは双子やから…なんか言うだけで辛なる」
「…そうやな…。お前ら、似てへんけど双子やもんな」

ふと時計を見れば、そろそろ時間だった

「最後にの顔見ていくわ」
「ん、そうし。」

の部屋の扉を、音を立てずそっと開く
ベッドの上で、優希は穏やかに寝息を立てていた

「……

これで最後だ。
本当は……俺はもう、この家へ戻ってくるつもりは無い。

だから、

「好きや」

最後に伝えさせてくれ

「好きや、。…ずっと、好きやった」

間違っていると分かっていた。
気持ち悪いとさえ、思った。
許されない思いだということも、すべて  分かっていたのに。

この気持ちは消えることは無かった。きっと、これからも消えることは無いだろう

だから、せめて


「 愛してる 」


最後に口付けを交わすことを、どうか 許して欲しい


ぽた…と、何かがの頬へ落ちたのを気のせいにして、俺は部屋を後にした
母さんと父さんに別れを告げて、この家を出て行くために。










「…っ…光……」

好きだった。本当は、私も光が好きだった。…そして、光も私のことを想ってくれてることも…知ってた。
間違ってるって事も、許されないってことも分かってた
気持ち悪いとも想った。でも、光に想われているという喜びのほうが、大きかったんだ

伝えなかったのは、光の苦悩を知っていたから。

本当は、堕ちることなんて怖くなかった。光と一緒なら。
でも、精一杯気持ちを押し殺して私の笑顔を守ろうとしてくれる光の思いを、大事にしたかったんだ

「光…っ」

好き。好き。好き。

「愛して…っる…」

愛してる。
届かないことなんて分かってる。それでも、

「…っぅ…ふ…」


初めて触れた光の唇は愛に溢れていて  冷た、かった。


頬に残る、初めて見るあなたの涙。
私の涙と溶け合って、消えてしまうのが悲しい





どうして想い合うことがいけないんだろう。

どうして愛し合うことがいけないんだろう。


どうして、


ただ 愛しいと思うことがいけないのですか










愛してる


今度出会った時は、どうか 何も無かったかのように 笑い合えますよう。





By [Love Mistake.] 紫陽 華恋 (200000HIT御礼企画作品)