蒼の空に浮かぶ陽は高く、時刻はもう昼の2時。 「なぁ、日吉」 「…何ですか さん」 「上手くなったな テニス」 「……有難う御座います」 隣に貴方が居るだけで、俺の周り気温は3℃ほど上昇している様だ 夏休みに入って、さん…つまり3年生は全員引退し、早一週間。 まだ部長引継ぎは行っていないけれど、100%の確率で次期部長を担うであろう俺は、昼休みも練習も怠らない 「何ていうか…テニスが上手くなったって言うより… …迷いが無くなったって感じ?」 「迷い…?」 俺はずっと跡部部長への下剋上だけを目指して努力してきた。 迷いなんて無かった筈だ 「そう、何ていうか…テニスへの迷いは無いんだ。元から。 もっと別の…」 「…別の…迷い…」 別の、迷い。 自然と視線は、さんの射抜いた 「…ん?何だ?」 「いえ…」 この人しか 見あたらない。 他の迷いなんて。 テニス以外で、俺の心を乱すものなんて。 「何か、俺に言いたいことでもあるのか?」 …言えない。言えるわけがない。 「オイ、」 「あ、景吾 元気か?」 「見りゃ分かんだろうが…」 この二人の、互いでさえ気付き合っていない絆を目の当たりにして、言えるわけがない 「あ、そうだ で?日吉」 「…なんでもありません。あなたに言うことなんて…ありません」 せめてこの距離で貴方の傍にいたい。 だから、 すきです、なんて、言えない。 |