「…、良いのか?」 「何言ってるの?ネオ。ステラが居ない今、戦力は私とスティングくらいでしょう?」 「…」 「ああ、間違えたわね ――――ステラと…アウルが居ない今、だったわね…?」 浮かべられた微笑みは あまりにも綺麗で 優しく穏やかで 痛々しかった 「っネオ?」 「…」 「放して…」 「…」 「っ放して…!」 抱締められた腕から伝わってくるのは、温もり 生きている、温もり 人間の。 生命の。 でも、違う 「違う…これじゃないっ、知らない…っこんな温もり…私は知らない…っ!」 「…、」 「私は…1つしか知らない…あの温もりしか…っ」 「アウルの温もりしか…知らないのよぉっ!」 それは…彼女が初めて見せた涙 彼女は、泣かなかった 嘆くこともしなかった 戦闘不能になり先に帰還してブリッジのモニター越しに見た 『 ABYSS SIGNAL LOST 』の文字を見ても、彼女は。 「…アウル…」 たった一言、そう呟いただけで。 きっと、それは彼女なりのケジメ 自分は軍人で、アウルも軍人で そして一度死んだ人間は二度と帰って来ないのだということを自分に言い聞かせるように 「、泣き叫んでもいいんだ 嘆くことで、少しでも救われるなら」 「救われたいなんて思わない!!アウルが居ないこの世界に生きていることさえ無意味なのに…救われることなんて」 「…」 「そうして救われて辿り着いた未来にアウルがいるわけじゃない!なら苦しみうちひしがれて辿り着く世界で私は充分だ!」 「それでも…!」 「私はっ……」 貴方を想い過ぎたの アウル… 再び出会う世界は幸福であればいい そしてまた、私は貴方の温もりだけを抱締めて朽ちるから 温もりは1つしか知らない |