「…え……?」
「聞こえんかったん?…ボクの前から、消えェて言うたんやけど」

「ギ、ン………?」

「…市丸隊長、やろ?第三番隊 第四席、


目の前が真っ暗になって、私は立っているかどうかさえも分からなくて、ただ 信じられないろという気持ちと絶望に満ちて

目の前の、恋人……であった筈の、相も変わらず怪しげな笑みを携えてこちらを見ている男を見つめるしかできなかった。


「嘘、でしょう…?ギン…。嘘だよね…?」
「二度、言わせんといてくれん?――――ボクの前から消え。それと、ボクんことは隊長。そんで敬語も忘れたらアカン。
 ―――― 自分の立場、分かって言うとるん?」

「っ、ぁ……ぃ、や…………いやあああああああああああっ!!」


叫ぶ私。涙はこれ以上ないほどに溢れ、流れ。彼はそんな私を一瞥だけすると踵を返した
何も言わず。……一度も、振り返らずに。


「…ゴメンな、


その小さな言葉でさえ 私の耳には  届かずに。





「本当にいいのかい?」
「何がです?」
「…分かっているだろう?」

「………」


自分は藍染隊長に着いていくのだ。死神と馴れ合うことなどありもし無い、果てへと。

―――― 遺していくことになるのならば。
           ボクのことはもう、忘れて欲しい。敵として、恨んで欲しい。


なのに、





「…市丸、隊長っ………」

「……!」


何でやの?


「…ギン!」

「…


何で、お前は


「どうして…っ私も連れて行ってくれないの…!
 どうして…どうして…どうして…っ!

 あなたがどんな人だったとしても……私があなたを愛していることは 未来永劫変わることはないのに…ッ!」


愛しかった。連れて行きたかった。

でも


「…無理やのよ、


小さく呟いてから、を見つめた


「ほな、サイナラ。…… 第四席サン」


どうか、ボクのことは恨み、憎んで、嫌って。これがボクの、最後の願いや。


「う、ぅあああああああああああああっ」


あの時のように泣き崩れるキミを一瞥してから、視線は藍染隊長へ。

最後の最後まで、キミの泣き声が途切れることはなかったけれど。


遺していくことになるのならば
( どうして、どうして、どうして、どうして。私を置いていくのなら、どうして、私も雛森さんにように殺していってはくれないの。 )( 私だって、ギンなしでは生きてゆくことなどできないというのに。 )