はじめに感じたのは、虚無感。 「…ディーノ?」 隣にある筈の温もりがない。朝日の差し込む部屋の広いベッドに、私はひとり存在していた 「ディーノ…?」 ある筈の返事がない。普段ならでかける時は書置きを残していくはずだ。それもない。 私は嫌な予感がして床に脱ぎ散らかされた服を着て、部屋を飛び出た。家中を探し回った。いない。いない。いない。 「ディーノ!!」 叫んでみてもその言葉は虚しく家の中に響くだけだった。 …どうして?昨日はただ普通に、いつもみたいに(何をやってるか知らないけど)仕事が終わったディーノが 私の家に遊びに来て、そのまま泊まっただけの筈なのに。 …いや、違う。本当は気付いてたんだ。昨日のディーノが、少し変だったことくらい。でも、まさか こんな 「…っ…ディーノの、馬鹿っ…!」 違う。本当は知ってるのよ。あなたが何をしているかなんて。 知ってるのよ。マフィアのボスだって。だから、あなたが消えた理由なんて簡単に想像できるけど。 春のある朝、君が消えた ( あなたの傍にいれるなら、何を捨てても良かったのに。 )( あなたがいれば それだけで )
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