( どうしようどうしようどうしよう。今日は厄日かな。いや私にとってはラッキーディか?いやでも… ) 目の前でシトシトと涙を流す空を鬱陶しそうに見つめて溜息を吐いている私の想い人がいる。 その手に傘はない。私の手には傘がある。ぴ、ピンクの花柄の傘が。 声をかけるべきなのか傘を貸すべきなのか寧ろ傘をプレゼントするべきなのか、でもこんな少女趣味の傘なんて… あああああああどうすればいいんだ! 雲雀さんの姿を見ては集団で帰ろうとしていた人達がマッハの速さでバラけるのを視界の端で捕らえながら 私は雲雀さんの後ろで突っ立っていた。 雲雀さんは動かない。気が付けば昇降口には誰もいなくなっていた。え、どうしたらいいの私!! 「…キミ、さっきからそこに突っ立ってるけど…何がしたいの?」 「ひゃう!?あ、私ですか!私ですね!?」 ぎゃあああああ話しかけられた!話しかけられたよ雲雀さんに!どうすればいいのどうすればいいの 2人きりの空間に、一本だけ存在するピンク色の花柄の傘がとても色濃く見えた。 「…」 「や、あの…」 「…」 「傘…」 「…それを、僕に差せって?」 「いいいいいえ滅相も御座いません!そ、そうですよね、こんな傘 雲雀さんが差すわけ無いですよね…」 「…。」 相変わらず雲雀さんは無言で見つめてくる。痛いです!視線が痛いです! 「…別に、キミが差すなら入ってあげてもいいけど」 その言葉が私の耳に届いた時、私はどんな顔をしていたんだろうか。 二人と一本の傘
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