ああとても眩しいな。なんでだろう。痛みも何も感じない。聞こえるのはツナや獄寺くんやヤマモトの声とか、
その他大勢の悲しみに暮れる声。ああ泣かないで。私のためなんかに泣かないで。私は満足だよ。
大好きな人を守ったんだ。名誉の負傷ってやつさ。
もしこのまま死んだとしても、これ以上ない幸せだよ。ただ少し、やっぱり…寂しいけど。
薄っすらと重たい瞼を明けたらお母さん、お父さん、ツナやリボーン…色んな人が私の顔を覗き込んでいた。
ねぇ、そんなに見られると恥ずかしいよ。大丈夫だよ、ぜんぜん痛く無いから。心配しないで?
ほら…泣かないでよ京子ちゃん。ランボも…いつもみたいにガハハって笑ってよ。どうして、どうしてみんな泣くの?
…私、が…死ぬ から? ガララ その時聞こえてきたのは病室の扉が開くおと。私は鈍い首を無理矢理回しそちらを見た 「…恭、弥」 搾りだした声はちゃんと恭弥に届いてくれたようで、恭弥は少しだけ微笑んでくれた。 でも、その貴重な笑みも憎たらしいものでもなく優しいものでもなくて、どこか影を帯びていて。 ああ、貴方は罪悪感を感じているの?いつもの貴方ならそんなこと微塵も思わないでしょうに。 私だから?そう考えると不謹慎だけど少し嬉しいな。 「恭弥」 貴方が口を開いてくれないから私はもう一度名前を紡いだ。 ねぇ、届いてるんでしょう?私の声( 気が付けば他の皆は病室を出て行っていて、二人きりだ ) 「…馬鹿じゃないの」 「ひど、い」 「…なんで、僕なんか庇うの」 「だめ、なの?」 「…駄目に決まってるじゃない。何でキミが そんな傷、負ってるの」 恭弥は私の頬に貼られたガーゼを頬ごと包み込んだ。暖かい。恭弥のぬくもりだ。 勿論傷はこれだけではない。…1番ひどいのは、多分腹だ。 「守りたか、ったんだ よ。恭弥の、こと。すき だから」 「…ほんと、馬鹿だよ キミ」 「ひど、」 「馬鹿だよ…」 私はもう一度「ひどい」って言おうとした。でも、言えなかった。 黙りこくってる私を恭弥は少しだけ抱締めた( ベッドに寝てるから、覆いかぶさるように見えるんじゃないかな ) 「好きだよ」 優しく耳に入ってくる 「好きだよ、」 愛しい声が、心に染み込んでゆく 恭弥は「好きだよ」とずっと繰り返した。私は何も言わずにそれを聞いていた。 途中、なんだか眠くなってきて、私は瞳を閉じ始める 「…」 「恭、弥。…すき、すき。」 「―――愛してるよ 」 最後に聞こえたのはその言葉。視界が暗くなり感じたのは唇の温もり。抱締められる直前に見た、はじめて見る恭弥の涙が、頭から離れなかった。 目を閉じてからもずっとずっと彼は「好きだよ」と繰り返していた。それはたとえば手紙のように。 最初で最後の彼の涙。 水びたしの手紙に包まれ、私はゆっくりと襲いくる尋常ではない眠気に体を預けたのだ 水びたしの手紙みたい |