「赤也ぁー今日部活の帰り、マック行かね?」 「オイブン太っ」 「な、何だよジャッカル」 「…今日は…」 「あ …そっか、今日はあの日…か」 センパイ達が後ろで小声で話している声も 聞こえていたけど 聞こえていなかった。 矛盾しているけど、本当に 耳に入ってはいたけれど 頭には 入っていなかった。 「赤也 今日は部活に出ずに帰っていいよ」 「幸村部長っ? 俺なら大丈夫っスよ やれるっス!」 「…やれないだろうから、言ってるんだ 三年前のこの日にが死んでから 毎年毎年、テニスなんて手付かずじゃないか」 「で、でもっ」 「…分からないのかい?邪魔だと言ってるんだよ」 「っ…」 分かってる 俺が、ちゃんと部活をできないことくらい そして、幸村部長の厳しい言葉も、俺の為だってことも、分かってる でも… 「…赤也」 「仁王、センパイ…」 「…んとこに、行ってやり」 「…!」 「な?」 「……はい 失礼しますっ」 仁王センパイと幸村部長に頭を下げて、部室を飛び出した 今日は の命日。 三年前…中学三年生の時の今日、は死んだ ――丁度その日、俺たちは喧嘩して――… 『ばかっ!赤也なんか知らないッ』 『俺だって知らねぇっ 今日は一人で帰れよ!』 『分かってるわよっ』 いつもは家までを送り届けていたのに、その日は喧嘩した所為で、学校の前で別れた その、帰り道だった 十字路で、に気付かず飛び出してきたトラックに跳ねられ――… やっぱり謝ろうと思ってん家に向かって走り出した そして、その十字路に人だかりができているのを見て、何か 嫌な予感がした。 人混みを掻き分けて、その中心に出た時 一面の赤が 目に入った その中心に倒れている、赤によく映えた白い肌の――… 「…」 もしもという仮定に意味などないけれど やっぱり、思ってしまうんだ “もしも”俺が早く謝っていたら “もしも”喧嘩をしていても、ちゃんと家まで送り届けていたら。 もしも もしも 毎年毎年、この日だけは そう思ってしまう 「…」 墓前に華を添え、墓石に手を触れる 「…ごめんさえも…言えなかったな…」 喧嘩別れして、そのままサヨナラなんて 哀しすぎる 「…好きだって…あまり、言ってやれなかった」 はいつも、好きだ好きだと俺に伝えてくれたのに 「………好きだ…………」 言えなかった。 いつも、心の中で想っていたのに。 これ以上同じ過ちを犯さないために 俺はお前の事、絶対に忘れねぇ 「…愛してる…」 だから どうか安らかに 眠ってください。 もしもという仮定に意味などないけれど |