いつからおかしくなったのかな。でもそんなこと考えなくても分かるよ。キミに出会ってからだよね。 キミに出会ってから、僕は僕には要らない感情をたくさん手にしてしまったんだ。 たとえば情けや、優しさや、悲しみや、愛しさや…ぜんぶ、ぜんぶ 僕には要らなかったはずのもの。 気がつけばそれを全て背負いながら、この両腕はキミを抱きしめるためだけにそんざいしていた。
「莫迦みたい」
ドクドクと、血が流れている。この、両腕から。群れてる奴等を噛み殺すためだけに存在していたはずの両腕。 でも、今となってはもう、
( 両腕から血が溢れた時最初に思ったことが 『もうキミを抱きしめられないね』 なんて… )
違うだろう?秩序を乱す奴等を噛み殺せなくなると 並盛の秩序がまた崩れてしまうと、そう思うはずだろう? なのに違った。僕は、キミを抱きしめられないことを嘆いたのだ ( このとき気付いた。もう既に、僕は理外にいたのだと )( その事実は僕にとっては理外の理でしかなかったけれど )
「 キミの所為だよ、
この両腕を切り裂いた張本人である、目の前に立ち尽くす少女に微笑んだ。 彼女は青ざめた顔で僕を凝視していた。…どうしてだい?どうして、そんな顔をするのさ。 キミはキミの任務を、無事果たしたのだろう?僕を、使い物になれなくするという、任務を。
「…恭 弥」
「何?
「何で…なんで わたしのこと怒んないの。憎まないの。わたし、あなたの腕を切り裂いたんだよ」
「ああ、そうだね。…でも、僕こそ聞きたいよ、。キミはなぜ任務は成功したのに、そんな顔をしているの」
( ほら、またそんな顔をする。 )抱きしめたいのに、できないんだ。ごめんね。僕の腕はもう動いてくれないみたいだ。
「何で僕がキミのことを憎まないかって聞いたよね」
「…」
「あいしてるからだよ、
キミもそうだろう?僕のことを愛してるから、そんな顔をしているんだろう?
だから僕は抱きしめたいのに。抱きしめたいんだ キミを。 愛して る か ら ――――…


理外のだと

 分かってしまった



( そうだよ。わたしは、恭弥のことを愛してる。 )( だから恭弥になら憎まれて殺されてもいいと思ったのに )