隊長専用 執務室。

「すみません隊長、もう一度言ってもらえますか?」
「え?いやだから明日ボクとデートせん?って…」
「ああそうですか、殴り倒して欲しいんですね分かりましたいますぐお望みどおりに」
「ち、ちょお待ってェなちゃん…なんや…怖いで…?」

「仕事もたまりにたまっててやらないくせに人をデートに誘うとは何事ですかー!!!」

「っ…!!」

刹那響く轟音。
イヅルが驚きその場に駆けつけると、壁に追い込まれている我が上司市丸 ギン隊長と、
実力ならば第三席くらいであろうが面倒くさいとの理由で雑兵として市丸の下に就いている
はあろうことか隊長であるギンを殴ろうとしたらしく、後ろの壁に拳が突き刺さっている。

「あの…、さん…?」
「あーイヅル副隊長!もう、アンタももっと酷く叱んなきゃ駄目ですよ、隊長のこと!
 だからこの人はいつまでもこんなぁにだらけてるんですっ!もう隊長失格ですよ!!」
「え…」
「ヒドイわァちゃーん…。」
「ふんっ」

は思いっきり拳を引き抜くと、じとり、とギンを睨んだ

「仕事してください 市丸隊長」
「いややわァ、ギンって呼んでv」
「仕事してください い・ち・ま・る・た・い・ちょ・う!」
「……仕事全部終わらせたら、デートしてくれるん?」

少し切なげ表情で、ギンはを見つめた。懇願するように。
はその視線を受け止めると、

「…考えておきます」
「えー…約束してくれへんのー」

心底ショックそうに項垂れるギンに、このままでは仕事をしてくれないと悟ったはギンの耳元に口を近づけ、

「仕事終わるの待ってるからね    ギン」

それだけ呟くと、すぐに踵を返して執務室を出て行った
残されたのは、唖然とするイヅルと、とても楽しそうで嬉しそうな―――ギンの姿のみ。


「( バカじゃないの…私だってデートしたいに決まってんのに… )」

だから早く仕事を終わらせて、この“隊長”と“雑兵”という立場から抜け出したいのに。

「…ギンのバーカ」


恋愛感情冷却期間
( あなたの隣に立てないのなら、第三席なんてコトバいらないと思った )( なのにこの差は悲しくて悲しくて、くじけてしまいそうになるんだ )