少しでも良いから、その瞳に映りたいと思った
僅かでも良いから、その記憶に残りたいと思った
覚えていますか?
初めて私が 貴方の視界に入った日のことを。
私は忘れることができません
…貴方の瞳は、あまりにも綺麗で 強くて
…言葉なんかでは表しきれない程、私は貴方を想っています
紫陽花
『新入生代表 跡部 景吾』
その時の彼は、まだ幼くて
身長も160cm無くて、けれどあの蒼の瞳は ずっと、ずっと輝いていた
「ピンク色の花びらの舞う今日この日に――――…」
透き通るような声
耳に残って、離れなかった。
歩く姿も、礼をする姿も、座る姿まで 全てが美しくて
私は、一瞬で恋に落ちた
現実は、結構ひどくて。
1、2年と 彼―跡部くん―と同じクラスになることは無かった。
けど2年生の秋に転入してきた侑士と仲良くなって、
侑士が同じテニス部であり、レギュラーである跡部くんと仲良くなって、少し経ったある日
「自分、跡部んこと好きやろ?」
そう言われたのは、冬。
それから、侑士に少しずつ協力してもらいながら、跡部くんに近づけるようにと頑張った。
生徒会に入ろうとした。
…落選して、入れなかった。
テニス部のマネージャーになろうと思った。
…色々と怖くて、諦めた。
結果彼との接点を持てることは無くて…
放課後、教室からテニスコートを眺めることしか出来なかった。
そんな、2年生の2月のある日のこと
図書委員だった私は、その日当番だった為に図書室にいた
「( 跡部くん見れない… )」
その時の私は、きっとはたから見ても不機嫌そうだっただろう。
人も来ないし。
いっそサボってやろうかと私の中の悪魔(笑)が囁いた時
――ガラッ!
ドアが、勢いよく開けられた。
時間的には微妙な時間。
帰宅部の子は帰っているだろう時間で、部活に入っている子は部活中であろう時間。
そんな中くる人は誰だ、とフと入り口に目をやった時
口が あんぐりと開いた。
其処に立っていたのは…自分の想い人。
金がかった茶髪に、1つ1つ整ったパーツ、印象的な泣きボクロ
何より――…夕日に染まりかけている図書室の紅に負けないほど強い光を放った蒼。・・・蒼の瞳。
紛れも無い、跡部 景吾。
「あ…とべくん?今、部活中じゃ…」
「アーン?貴様誰だ?…俺様のことは知ってて当然か、まぁいい。
今は休憩中だ。借りたい本があったのを忘れててな」
彼は一瞬だけ此方を見たけれど、すぐに本棚に視線を戻し、そこへ向かって歩いていった
私の心臓は、異常なまでの早さで脈打っている
「コレだ」
「め、珍しいね、跡部くんが図書室に来るなんて」
「…ああ、殆どの本は家にあるからな。…コレだけは、家に無かったんだ」
「へぇ…」
平然を装いながら、パソコンに打ち込んでいく。
図書カードなんていうそんなものは無い。
今はもうすべてハイテクなのだ
「…はい、受付しました。
1週間後までには返してください」
「あぁ、分かった。じゃあな」
「うん…バイバイ」
彼と話せるなんて。
彼と別れの言葉を言い合えるなんて。(微妙なとこだけど)
…彼の瞳に、私が映るなんて。
本を渡すとき、病数にすると1秒も無いかもしれないが、確かに目が合った
蒼の瞳は、やっぱり至近距離の真正面から見ると また一段と綺麗で…
「好き、だなぁ…」
彼への想いは、募るばかりだった。
梅雨――あめ―アメ―Rain――
( Remember...? )