いっそ罵ってほしかった


優しく赦されるくらいならば、いっそ。




けれど、キミがそれを望まないのを知っているから


自責心を心の奥底に押し殺して、できる限りの笑顔で微笑んでみせるよ































紫陽花

















































「…っそだろ…」

広い俺の自室に 声が響く

「ホンマや。跡部。…アイツ…は氷帝の生徒や。しかも、俺の友達」

が急遽手術室に運ばれ、手術は長時間になるとのことで俺の家へ来た

「図書室…?」


忍足から聞かされた話に出てきた、図書室。

そこが、俺とが 初めて会話をして、俺がを瞳に捕らえた場所…らしい


―――あぁ そうだ… )


思い出した。
家にも無い本が学校の図書室にあると聞いて、半信半疑ながらも部活の休憩中に足を傾けて。
…図書室に本を借りに行くのも、休憩中に抜け出したのも生まれてこの方初めてだったから、
覚えている

会話までは思い出せない

けれど―――あぁ、そういやアイツは妙にどもっていた

その時は、いつもの事だとあまり気にしなかったが


( …気付き、たかった )


気付いていれば…



「跡部―――
〜♪
「あ、スマン俺やわ」


忍足が俺の名を呼んだ刹那、忍足の携帯が鳴った
少し離れて携帯を開くと、アイツは目を見開いた
そして慌てて着信に応える


「…ホンマ、ですか?」

「分かりました…すぐ行きます」


短い通話

忍足は携帯を閉じると俺の方へ歩み寄ってきて、腕を引いた


「っ?」

「行くで」

「何処に…」

んとこや。………手術は成功した、が……その後に容態が 急変したんやと」

「ッ!!」


忍足に引っ張られるがまま家を出て、そこにいた車に俺たちを送るように指示する
出来る限りのスピードで病院に向かい、目的地に着くと同時に運転手に礼を伝え、車を降りた


…っ!」


走る 走る

此処が病院内だということも忘れて




ただ、キミの元に


















っ!!」


病室に駆け入れば、そこには見知らぬ男女

…多分、両親だったのだろう

結局、詳しい事は分からずじまいだけれど。


…っ」


ベッドに横たわり、酸素マスクをして、体のいたるところから管を伸ばしているの姿は、
あまりにも痛々しかった
肌が綺麗すぎる所為で…余計に。


「あ…とべくん…ど、して…」

「忍足に聞いた…お前」

「あはは…聞いた、って…私が…跡部く、んを…好きになっていった経緯…?」

「そんなところだ…」

「…そっ、か」


彼女は、こんな状況下だと言うのに少し頬を染めて微笑んだ

…自分はこんなにも想われているのだと 改めて思った


「悪かった…俺、何も気付かなくて…お前を、傷付けてばかりで…俺は…愚かだった…」

「な、に…言ってるの…?私は…充分嬉しかった…あの日貴方が現れたことから…」







私 の 幸 せ は 始 ま っ た の







「っ…ご、め…」

「跡部くんは…悪くないよ。だから…泣かない、で?」

「俺っは…お前のこと…」

「…まだ、言わない…で…?それ、が…私にとって…嬉し い言葉でも…悲しい、言葉でも…
 元気な時に…、しっかりと 聞きたいから…」


「…分かっ、た」

「じゃぁ…ちょっと、休む、ね…また…後で―――――



「…ああ」






“ ま た 後 で 。 ”



















閉じられたその漆黒の瞳を見ることは  もう、二度と叶わなかったけれど。




















梅雨(あめ)――あめ―アメ―Rain――


( キミが見ていた、穏やかで 優しい、愛しい世界 )