何故と問われても答えられる理由など無かった


確かなものは何も無くて


気付けないまま、時は過ぎてゆく




何故と問われても答えられる理由など無かった


ただひとつ、言える 確かなことは



消えてほしくない、と  いう、子供の我儘のような、願いのみ



何が とか、誰が とか


その問いに答える権利は   まだ、無かったけれど。































紫陽花

















































あれから、数日が経った。

未だに、あの行動の意図が自分自身理解しかねていた


すぐ、分かりそうなものなのに。

今まで過ごしてきた俺の世界には、そんな想いは存在しなかった為か

否定していた為か

理解しかねていたのだ



「ッくそ…」



正体の分からないモヤモヤ。

何とか消したくて、俺は我武者羅にテニスの練習に打ち込んだ。









「…跡部 最近何や苦しそうやな」

「…前は…楽しそうだ、って言ってなかった か…?この似非関西人…っ」

「ヒド!似非て!俺は生粋の関西人やっちゅーの」

「、…だったら 似非伊達眼鏡、だ…」

「ヒド!俺はこの眼鏡に情熱を懸けとんのに!」


何の情熱だよ、とツッコむ気力はもはや無かった。
かれこれ2時間ほどぶっ通しで壁打ちし続けていたため、体力はもう限界という節目に近づいている

…限界を 超えてやろうか

ふと思った事なのだが、それもいい、と口角を吊り上げる

限界は、越えるためにあるのだ


「煤I?急に微笑みよってからに、怖いわぁ」

「うるせぇ。…それより、ちょっと…っ相手しろ」

「はぁ?そんなしんどそうにしながら何言うてんねん。そろそろ休憩しぃや」

「良いからしろっつってんだろ!」

「…ハイハイ、分かりました」


限界を超えるだなんて、気を紛らわそうとする弱い自分を隠すためだけの大義名分に他ならなかった
確かに限界は超えるためにあると思っているし、今までだって幾度となく挑戦してきた壁だ
けれど近頃となっては限界を超えるのではなく限界を上げることに専念していた
越えられないと、どこかで諦めていたからだ
だから、限界を高めていた
そしてその逃げに今、新たな逃げの口実として挑戦している俺はどれほど愚かで 弱いのだろうか


それでも



『 涙を隠してくれるから 』



振り払いたかった。

いつまでも心の隅に存在し続けるアイツを。

厭な訳じゃなかったけれど

俺が、俺じゃないみたいで

…要は、意地を張っていたんだ

今まで築いてきた俺を、あいつは…あまりにも、いとも簡単に崩すから


抱きしめた理由なんて。

…本当は、分かってたんだ











雨を優しいと言ったあいつは

あまりにも、儚くて

雨に濡れてゆくその姿は

あまりにも、綺麗で


故に、今にも消えそうな





だから、抱きしめた

抱きしめるほかに、繋ぎとめる術を知らずに。






儚く、美しいその姿と綺麗に透き通った青みがかった髪の残像に残ったのは



言葉では表せれない、何とも言えない   衝動 。


















愛しい   なんて








そんな感情








…俺は、認めない




















梅雨(あめ)――あめ―アメ―Rain――


( 知らない道を無心に駆けて ただ、逃げた )