恋愛感情と謂うには何かが足りなくて


友情と謂うには何かが大きすぎた



愛しい



恋愛でもなく友情でもない この愛しさは    何





あの衝動を、感情を  強く、強く抱きしめたら





残ったのは 愛しく大切な キミの残像 だけだった































紫陽花

















































  ザァアアアア―――…



今日も、雨は降っていた。

かれこれ、一週間ほどあそこへは行っていない。


胸に残る焦燥感をはらいながら、目の前で変わりない笑顔を浮かべて此方を見ている男を見やると、
焦燥感は、さらに増した


「…なんだ、忍足」

「いやな、一個だけ言いにきたねん」

「…何を」

「意地張ってばっかやったら…大事なもん、失うで」

「は?」

「“その時”は確実に近づいとる。このまま逃げてばっかやったら…お前は一生後悔することになる」

「何のこと――

「分からん、なんて言わせへんで。……今年の梅雨は 終わるの早いらしいで。…よく、覚えとくことやな」


忍足はそれだけ言い残すと教室を出て行った

“何のこと”

…最後の言葉で、理解した。


「何でテメェが…アイツのこと知ってんだよ…」


今年の梅雨は 終わるのが早い


その事実は、今日の朝に読んだ新聞で既に知っていた。

だからこそこの焦燥感が湧き上がってきたと言っても過言ではなかった


『時々で良いから…会いに来てくれる?』

『“その時”は確実に近づいとる。このまま逃げてばっかやったら…お前は一生後悔することになる』



―――逃げるのは もうよそう


忍足にまで見抜かれてしまった。

そして忍足は、俺よりも…何かを知っている気がした

それが何だか悔しくて、放課後 あの木へと向かった










「…あ  久しぶり。跡部景吾
 ………もう、来てくれないかと思ったよ」

「…フン」



あの笑顔で、彼女は俺を迎えた。

咎めることもせず、ただいつものように



「…なぁ」

「何?」

「忍足侑士って知ってるのか?」

「、…おしたり…ゆうし…
 微妙、かな」

「アーン?」

「名前は知ってるけど…会った事ないから顔は知らない」

「………そうかよ」


なら、何故アイツはコイツを知ってたのだろう。

…少し考えて、やめた。

くだらない。


「梅雨明け…早まったね」

「ああ。
 …そういえば、梅雨が終わればお前は…どうなるんだよ?」

「!…消える、かな」

「消える…?」

「うん。跡形もなく…消えるかな」


その時は、その言葉に 深い意味など感じなかった。

ただ、この場から跡形もなく消えることなのだろうと 特に、何も。

…このときに 気付いておくべきだったのかもしれないけれど。


「消えたら…そうだな、ずっと跡部景吾のこと見てるよ」

「ハッ ストーカーじゃねぇか」

「あはは、そうかもしれな…ッゴホ…」

「?おい どうした?」

「ケホッ…、ん 大丈夫…ちょっと咳き込んだだけ。
 梅雨明けが近いからかな」

「そうかよ」


気付く、べきだったのだ。










「…梅雨明けが…近いから…」










漆黒の瞳に浮かんだ悲しみに、気付くべきだった――




















梅雨(あめ)――あめ―アメ―Rain――


( 後にくる悔しさだから、後悔と云うのだけれど )