何度も  何度も。




























My lover




























「ねぇ侑士…今度の日曜、部活ないよね?」

「ん?無いで?」



あたしの家に彼氏である侑士が部活帰りに遊びに来ている。
これは平日のいつもの習慣。



「じゃぁさ、此処行こうよ。久しぶりにデートしよう…?」


あたしは雑誌片手に侑士に提案する。
少し不安に、でも期待しながら。


「んー…
 日曜はテニス部の皆と出掛ける約束してるねん…
 とはいっつも一緒に居るから良いだろって岳人に言われてん」


でも、侑士の口から出てきた言葉は、あたしが期待していたものとは違うもの。


「じゃぁあたしも一緒に…」

「それはアカンよ。
 …御免な?次は、一緒に行こ」

「……ぅん」







そして侑士は帰っていった。








「…彼女のあたしより、部活仲間を優先するんだ…。侑士の…ばーか…」



あたしの目から、何か暖かいものが 流れ落ちたような気がした。


それを拭うこともせず、あたしはただ侑士が出て行った扉を見つめていた―…





























―日曜日―





























あたしは友達のと街へ遊びに来ていた。

に相談したら、うさ晴らしに買い物でもしよう!って事になって…。










「ね、君達。今ヒマ?」



後ろから、声を掛けられた。

俗に言う、ナンパ。


「え、ちょっ」
「一緒に遊ばない?俺達男二人で寂しいんだよね〜」

そう言って腕を掴まれる。

「離してくださ…」
「そんな事言わずにさぁ…ね?」
「や――」


無理矢理連れて行かれようとした、その時―…


「人の彼女に何やっとんねん。」




聞きなれた低音ボイス。
それと同時にあたしの腕を掴んでいた男は一瞬にして腕を背中に回され、動きを封じられた。
もう一人の、の腕を掴んでいた男は宍戸によって同じ事をされていた。



ありきたりな王子様の登場に、あたしはただ呆然と彼の名を呼ぶ。



「ゆ、し…」
「忍足君…」



…大丈夫か!?も…」

「「うん…」」









侑士は男を鳳君に引き渡すと、あたしの傍へとやってきた。









「何もされてへんな?良かった…」

「なんで…」

心配してくれてる侑士の言葉を無視し、あたしは口を開く。

「え?」

「何で助けたの?
 本当はあたしなんてどうでも良いんでしょ!?彼女なんかより、部活の皆を優先するくらいなんだから…!」


子供じみた独占欲、嫉妬。
部活の人達にヤキモチ焼くなんて…どうかしてる。
でも、止まらないんだ
それだけ貴方が好きだから



 …んー、…
 跡部、今日はもぅ帰ってえぇ?」
「あぁ」
「おおきに。
 ほな行くで。
「ぇ?ってきゃ…っ」




気が付けばあたしは侑士に抱かれていた。
…俗に言う、お姫様抱っこ?








「ちょ、降ろしてよ…!」
「ほな皆さんさようなら〜〜」
「侑士〜〜〜〜〜!!」









あたしを無視して別れを告げる侑士。

あたしはそのまま侑士の家へと連れ帰られた。











「…しんっじらんない!
 あたし怒ってんだからね?あんな―」
「……ごめん」


「ぇ…?」




あたしの言葉を遮って
侑士はあたしをゆっくりと抱締めた。



その体温が 嫌に心地良い。










「今日、やなくて部活の皆と出かけたんは、
 今日が最後って事で、やねん。」
「へ?
 最後…?」

何処か申し訳無さそうに話す侑士に、あたしはただ間抜な声を出して。

「これからの休日は、全部の為に空けよう思て…なら最後に皆で出かけよて言うから。」
「…!
 で、でも…それなら、別にあたしも行っても良かったでしょ…?」

そうだよ、それならあたしも一緒に行ったって―…

「…ちゃうねん、が行って…
 他の奴に捕られたら どうしよう思て…」

「…ゅ、し…」



少し恥ずかしそうに呟く侑士に、あたしは何でこんなに馬鹿なんだろう、馬鹿だったんだろうって思った。
そして、瞳から墜ちてゆく雫。



「不安にさせて御免な?
 でも…が俺ん事嫌いんなっても…」




侑士はあたしの頬を流れた涙を拭って













































「何度でも言うで?




 俺はが好き…大好き…愛してる…って。」





























涙が、止まらない。

ダムが壊れたように次々と流れ出ていく。















「ゆぅ、し…侑士…」



「好きやで、…。」
「あたしも、好き、だよ…大好き…」










どちらからともなくキスをして。

ただただ互いの体温を確認する様に、抱締めた。
































































侑士は 私の自慢の大好きな恋人です。



何度でも何度でも  自信持って、胸張って言えるよ





























































は、俺の自慢の恋人。
可愛くて、優しくて。愛してる。


何度も  何度も。
心の中で 唱えてる。












「「愛してる」」





























































"My lover"












END





05/11/14
             By 紫陽華恋