知 ら ず 嫌 い ―後編― ガチャ… 「よく来たな…」 「「「「ようこそ、男子テニス部へ」」」」 長太郎くんによって、部室の扉が開けられたかと思うと、 テニス部レギュラーと思われるイケメン達が、ズラッと二列になって並び、 花道を作って…私を部室へと迎え入れた 「(ホホホホ ホストクラブ!!?)」 本気で思った。 だって、ドラマでやってる夜○とか云うドラマの、ロミ○とか云うホストクラブと似てるんだもん! 「歓迎するぜ――…」 そう言って、花道の先の豪華なソファに座り込み、こちらを見て不敵に笑っている男は、たぶん… 「跡部…センパイ?」 「ほぅ、俺様の事は知ってたか」 「生徒会長ですから。毎週朝礼で(別に見たくなくても)見ますから。 ていうか、レギュラー全員の顔と名前くらいなら知ってます。」 バカにされたみたいで、私はキッパリと言い放った。 …だって、知らないわけないじゃん。 が、毎朝毎朝騒いでるんだもん 目立つし。 「…俺達の事は、嫌いなんじゃなかったのか?」 「狽ネ、なぜそれをっ」 「ククッ…マジでかよ」 「!!!(カマかけやがった!!)」 …やっぱり無理だよ。 性格が無理だよ。 「まぁいい。 そんなお前に、頼みたいことがある。」 「は?頼み?(リンチじゃないの?)」 「あぁ。それは――…」 「男子テニス部のマネージャーを、お前に一任したいんだ」 「……アーン!?」 「「「「「(女跡部が居る!!)」」」」」 「何ソレ本気で言ってるんですか?」 「あぁ。本気だ」 「嫌いだって分かってんでしょう?」 「だからこそ、だ。」 …何ソレマジ意味わかんない。 なんで? 「…マネージャー志願してくれる子は、いっぱい居るんだ」 その時、斜め後ろから長太郎君が話し出した 「けど、皆ミーハーな子ばっかりで・・・ マネジの仕事より、レギュラーに夢中なんだよ」 「…あ、それで仕事が進まないと。イコールレギュラーが困る、と。」 「そう」 「で、ミーハーなんてあるわけない、寧ろ嫌いな私にその仕事をお願いしたいと。」 「そう」 …尤もな考えね。 ただ一つを除いては。 「最善策だと思います。 けど、いーっこだけおかしいと思うんですが。」 「何だ?」 「嫌いな人達のところで嫌いな人達の為に働くなんてどこのサル以下のバカがやるっていうんですか」 あ、サル以下に限定しちゃった 「…まぁ、尤もな意見だ。 ……そうだな、ゲームをやらないか?」 「…ゲーム?」 「おいかけっこだ。 レギュラー8人VSで。…俺達が、お前一人を捕まえる。」 「狽ヘ!?無理に決まってるじゃないですか!アンタら、テニス部ですよ? 私 帰宅部!分かってる?」 いや、足の速さには自身あるけど! 「範囲はこの学校の敷地内全般。 正門から裏門まで、全ての区域。」 「ひ、広っ」 「アーン?文句あんのか? それだけ広けりゃ、幾ら8人居たとしてもお前一人見つけるのは至難の業だろうが。 しかも、かくれんぼじゃない。鬼ごっこだ。…分かるな?見つかっても逃げりゃぁいいんだよ」 「…」 「さ、決めろよ あ、一つだけ言っておくが…ここで断った場合、俺達はずっとお前に付き纏うぜ?」 「煤I?(嫌だ!!)」 …どうしよう。 相手はテニス部。 しかも、全国大会だって出ちゃう、強いクラブ。 当然、足も速いし体力もある。 …けど、付き纏われるのはマジごめん。 ――ってか、 ぶっちゃけ、そのゲーム素で面白そうなんですけど!!!!(オイ) 「…分かりました。受けてたちます。(楽しみvv)」 「今週の土曜、午後2時から、午後5時までの3時間。 それがゲームの時間だ。分かったか?」 「了解!」 「なら、今日のところは帰れ。」 「…失礼しまーっす」 跡部先輩に背中を向けて、長太郎くんを横目で見てから、部室を出る。 そして、バタンッと無駄に大きな音を立てて扉を閉めた。 「(…勝負は、土曜…か)」 小さく、心の中で呟いた。 「っはぁ…はぁ…」 土曜日:午後2時16分34秒。(細かい) ゲーム開始早々、私はピンチに陥っていた。 「(早くここから離れてよ…!)」 私がいる場所は今の時期は使われない筈のプールの更衣室。 プール付近をウロチョロしてたら、向日センパイが現れたから、慌ててここに逃げ込んだ…んだけど… 「(逃げ場ないし…!!)」 窓から外の様子を伺う。 向日センパイは、ピョンピョン飛び跳ねながら私を探してる。 その時、 「(!こっちきやがった…!)」 更衣室に…つまり、私の居るところに向かって向日センパイが走ってくる。 向日センパイが、ドアノブに手を掛けた。 その時――… 「(ヤバイ!!)」 「向日先輩!あっちでちゃんらしき人影見ました!一緒に行きましょう!」 「マジか鳳!でかしたぜ!」 「はいっ」 長太郎くんの声。 …そして、もう一度外を見やれば走り行く向日先輩の後姿と、こちらを見て微笑んでる、長太郎くんの姿。 その微笑みは、酷く私を安心させた これはもしかしてもしかしなくても… 「(助けてくれた…!?)」 …やっぱり、優しいな 長太郎くん… 長太郎くんだけ… 長太郎くんだけは、優しいな…(遠い目) それからも、ゲームは続いた。 また幾度か長太郎くんに助けられつつ、遂にラスト5分。 「(あとこの300秒を乗り切れば…私の勝ち…!)」 300 250 200 150 100 50 30 20 10 9 8 7 6 5 4 3 2 1... 「〜〜〜やっ…」 「やったぁー!!!!」 「「あ、!!」」 「クソクソー!」 「チッ…」 私は部室前で大きくVサイン。 めちゃ嬉しい。 こんな苦手なテニス部のマネージャーなんてやってられないもん。 「おめでとう、ちゃん」 「!あ…長太郎くん…」 …そうだ、長太郎くんもテニス部なんだ もう、お別れか… 寂しい、な… 「ちょっと残念だな… ちゃんがマネージャーになってくれたら、部活も もっと楽しくなると思ったんだけど」 「で、でもゲーム勝ったし…」 「うん。分かってるよ。 でも、これだけは知っておいてね」 「え?」 「俺も先輩たちも、遊び心でちゃんを誘ってるわけじゃないんだ 真剣に、部活の為に最も適した人物がちゃんだって、認めてるから、こんなにも誘ってるんだよ …それだけは、分かっておいてくれないかな」 「…」 私は、レギュラー達の顔を見渡した。 …そうだ、こんなにフザけた人達でも、部活には真剣なんだ… それに、テニス部には長太郎くんがいる… …なにより… この人達と居ると…楽しいかもしんない… 「…私、やります」 「だよな、本当に残念だ…って…「「「え?」」」」 私の言葉に、レギュラーは皆 放心。 「…それは、マジで言ってんのか…?」 「マジですよ 跡部部長」 「(ヤル気満々だなオイ…)」 「やっぱりマネ、やってくれるんだね」 長太郎くんが、そう言って微笑んだ。 それはもう、素晴らしいまでの笑顔で。 「長太郎くん…?」 「嬉しいよv」 にこやかに、長太郎くんは私に言葉を投げかける。 …ついさっきまでは安心した笑顔。 今はやけに…怖いんですけど… 「狽ヘっ!」 「どうしたの?ちゃん」 「(そうだ…今の長太郎くん… と同じ雰囲気がするんだ…!!!!)」 長太郎くんもそちら側の人間でしたか… 人は見かけに寄らないというか… ま、とりあえず 「「「「ようこそ、男子テニス部へ」」」」 「…よろしく!」 結局は長太郎くんに踊らされてただけのような気もするけど引き受けちゃった以上、 頑張りますか。 END 06/3/2 柚依 様リクエスト、後編。 なんか…微妙な終わり方ですみません(滝汗) 強制的に終わらせたのバレバレですよね… でも思い浮かばなかったので、無理矢理終わらせました。 すみません…! リクエスト、ありがとうございました! 柚依様のみ苦情可。 (お持ち帰りの際は背景の直リンクだけはしないでくださいませ) By 紫陽華恋 |