まさに、金縛り。

















たった ほんの1秒。

















貴方の瞳を見つめただけで、私はその場から動けなくなった。

















ぶつかった線、金縛りのように

















「にーおーうーくん」


「…何じゃ 


「ね、仁王っ

 数学のプリント見せて!」


「……交換条件」


「何っ?」


「アイス1個」


「のった!」


「交渉成立、じゃの

 ほれ」


「ありがと」







初めて貴方と目が合ってから、約半年。



言い換えれば、中等部から高等部に上がってから、約半年。



貴方と私は、結構仲の良い友達同士。






「そういえばー、テニス部で、レギュラーになったらしいね  おめでと」


「当然じゃけぇ

 っちゅーか、幸村も真田も参謀も とっくにレギュラーになっちょる
 そげん凄いことでもなか?」


「いいじゃん あたしは仁王を応援してるんだから」


「…ありがとさん」





一年生の夏、仁王は柳生くんと二人でめでたくレギュラー入りした。


幸村くん、真田くん、柳くんは、テニス部入部時にレギュラーの先輩たちをなぎ倒し、(?)

見事、入部時からレギュラー入りしていたらしい。


そういえば、もうすぐブン太くんとジャッカルくんもレギュラー入りするのでは、という噂も流れている


…そうなれば、中学時代と変わらないじゃん ( っていうか2、3年の先輩方の立場は…; )




「あ 、ちょぉこっち向きんしゃい」

「え?」

「睫毛の上…ゴミ付いとる…」




呼ばれて顔を上げたら、仁王がこちらを見ていた




一瞬、視線が重なった。




ドクンと、鼓動が 大きく胸を揺らす






伸ばされた手、細く長い指は、あたしの左目の上瞼に優しく触れた


















その視線は 有毒の矢。
















「…仁王、」


















一度射抜かれたら もう、逃げることなどできない
















「好き」


































ソ ノ 視 線 、 有 毒 ニ ツ キ 注 意 。




逃 ゲ ル コ ト ハ  不 可 能 ナ




解 毒 不 可 能 ナ 、 毒 塗 リ ノ 矢




































「…知っとぅよ」
















その時細められた切れ長の瞳





綺麗な弧を描いて近づいた唇





間近でぶつかった、貴方の視線



































あたしの体の自由を奪う 毒塗りの矢。


































(この先その矢は 私だけのもの。)