君の心は返さない 「( あと30秒 )」 玄関を飛び出して、走り出す 「( あと25秒 )」 一直線の道を、ただひたすら、突き当りまで全力疾走 「( 5、4... )」 門が動き出す 「( 3、2... )」 閉まる直前に、身体を―――― 「(1!)」 すべりこませる! 「…いつもいつも、どうしてこうギリギリなの」 「(ぎっくーん!)さ、さあ!?」 「キミ家そこでしょ?いつも家から出てくるの見えるんだけど」 「(どっきーん!)知ってたんだ…」 「もう少し早く出れば歩いて来れるのに。 キミも馬鹿だね…どうして学習しないの」 どうして、って……… 「( アンタのせいだよ、ばーか )」 はじめて遅刻した日。 ずっと怖くて近付くことのなかった雲雀恭弥を、はじめて身近に見て。 その端正な顔立ちにドキっとしたのも束の間、 黒い、瞳の、 計り知れない深さに、吸い込まれそうになった。 以来、私はずっと、こんな感じの登校を繰り返している ( 彼に覚えてほしくて ) 「…ったく」 溜息をつきながら、門に鍵をかけると彼は私に振り返り、 ふっと微笑み。 「…まあ、こんな登校を繰り返すかぎり、キミのことは覚えててあげるよ … サン」 「…っ!」 ば れ て い た の か … っ ! 恥ずかしい。でも嬉しい。名前を覚えてくれていたなんて。 それに、この行為のことも認めてくれて。 ああ、大好きだ。やっぱり大好きだ。 ―――まあ、なにはともあれ、 「( こんな登校が続くこと 間違い無し、と )」 |