心は、 ガンッ ボコッ 猫一匹いないような暗い裏路地に、鈍い 人と人とが殴りあう音だけが響く。 他に聞こえるものといえば、複数の荒い、息づかいのみ。 ドサッ... 最後の1人が倒れる。 複数の人間が、倒れている。 その中心にただ1人立っていたのは 白い学ランの――――― 「仁のアホッ」 ぱあんっ 「っ…テメェ、ド」 「『ドタマかち割んぞ』はこっちの台詞よ!!」 山吹中学校。 都内でも不良校と名高いこの学校。 そんな山吹中の、放課後のテニス部の部室で、2つの声がぶつかり合う 片方は、昨日裏路地で喧嘩をしていた張本人、亜久津仁。 もう片方は、その幼馴染である 。 2人の言い合いの原因は、昨夜の亜久津の喧嘩にある 今まで何度もこういうことがあり、何度もは亜久津とぶつかっている。 何故なら、心配でならないからだ。 幼馴染として、友達として、女として。 「また、優紀ちゃんが泣くよ…」 何度言っただろうか、この言葉を。 そして、 「( あと何度言えばいいの )」 ふと力を抜いた瞬間、の目から大量の涙が流れ出た それに亜久津はギョッとし、周りにいたテニス部員も驚いた。 「優紀ちゃんだけじゃない… アンタに何かあったら、 私も 泣くよ…」 そう言いながら、は亜久津を弱弱しく殴った ズキンッ 「( …なんで )」 亜久津は不思議に思う 何故、 「( 何でさっきのビンタより 今のビンタのが痛ぇんだ )」 何故――― こんなに重いんだ。 亜久津はまだ知らない。気づくこともない。 その重さは、心の重さだと。 そしてそれを知る時、 自分がどれだけ成長したか、思い知ることになるのだ 優しく微笑む、の隣で。 |