僕は心の片隅で


君の名前を呼ぶ




コンコン

「景吾様。お目覚めの時間で御座います」
「…おきてる。入れ」
「…はい。失礼致します」

遠慮がちに部屋の扉が開けられ、見慣れた少女が入ってくる
扉が閉められ、こちらに歩み寄ってきたところを、
思い切り腕を引っ張り、ベッドに倒れこませる
そして、そのまま彼女を抱きすくめた

「っ、景吾様!」
「シッ。…あと、様はいらねぇ。いつも言ってるだろう」
「…景吾」
「フッ…いい子だ」

俺の腕の中で顔を赤くして暴れている少女は、
俺の想い人。そして、


叶うことのない 恋の相手。


「今日は宮園様がお見えになる日でしょう…?」
「…関係ねぇよ」
「あります」
「あ―――」
コンコン
「景吾様?宮園様がお見えになりましたが」
「じい!?早いだろう」
「早くお会いしたいとのことで。…ご案内しても宜しいでしょうか?」

返す返事など、決まっている。
いや、決められて いる。

「………ああ」
「かしこまりました」

じいの足音が遠ざかる
同時に、の顔色が曇っていく

「…ほら、景吾」
「…」
「みやぞ、っ」

その言葉を飲み込むように、口付ける
角度を変え、何度も。
酸素を求めて必至に開ける唇さえ、飲み込むように。


コツ、コツ...


再び 足音が近付く。

「…」

静かに、唇を離す
は何も言わず立ち上がり、扉を開け、部屋を出た
入れ替わりに宮園が入ってきて、
俺に抱きついた

扉が閉まる直前、


の 傷付く顔が、見えた。


「( 、 )」