悲劇の前日




パラ、パラ…

応接室の黒塗りのソファに沈み、雲雀に借りた小説のページをめくる
そろそろ物語りの山場だ。盛り上がってきている

ガチャ

そんなとき、いつもこの部屋を占領している彼が戻ってきた

「雲雀。おかえり、どこ行ってたの」
「…居場所をつきとめた」

さらりと、主語を抜いて答えられた言葉。
でも主語なんかなくても、その意味は分かった。
――― 今、並中の風紀委員が、次々と何者かにやられてる。
きっと、いや 絶対。そいつらのアジトをつきとめた、らしい。

「…そう。行くの?いつ?」
「明日」
「そっか…」

雲雀は強い。でも、私にはなんとなく、それが“最強”でないと思う節が、あった。
確かに、並中の中では最強かもしれないけれど。

雲雀には、こんな言葉要らないかもしれない。でも―――

「気を つけてね…」

「…誰に 言ってるの?」

その不敵な笑みを、もう一度私に見せて。
絶対にココに、戻ってきて―――――…。