還らない




「エアリ、ス」

暗闇の中、エアリスと2人で歩いていた。
エアリスが、ずっと繋いでいた手を放して、微笑だけを残し、前にある光に向かい歩き出す。

行かないで、ねえ 私を置いていかないで
私たち、友達でしょう?ずっと 一緒だったでしょう?

最後に1度だけ微笑んで、彼女は 光の中に、入っていった。

行かな い で


「エアリスッ!!!」


がばっと起き上がる
あたりを見回すと、驚いたようなクラウドの姿。

「…クラ、ウド…?」
「…大丈夫か?うなされていた」
「大丈夫…夢、覚えてない」

どんな夢だったんだろう。
とても…悲しかったことしか、分からない。

「…そうだ、エアリス!エアリスが出てきたような気がする。ね、クラウド エアリスは?」

エアリスの名前が出た瞬間、クラウドは苦しそうな、ばつが悪そうな顔をした

「…クラウド?」
「エアリスは…いない」
「え?なんで?」
「いない、んだ…」

クラウドはそう言うと、今にも泣き出しそうな表情をして、俯いた

「いない…エアリス、いない…?」

その言葉に、何か、頭の中で パキンと、音がした。
痛い。頭が、いたい。

――― エアリス…いない…

そう、エアリスはいない。

――― なんで?

知ってるでしょう?

――― 知らないよ

じゃあ、忘れてる

――― 何を?

忘らるる都での、あの一夜を…

――― 忘らるる、都…夜…

水の祭壇に、彼女はいた

――― そう、いた。祈っていた…何かを

そして…

――― そして…………セフィロスが、きて

セフィロスが

――― エアリスを、


「っエア、リ ス」

「エアリス、あ、あああああああ…っ」

そう、エアリスはいない。
なぜか?それは…

死んでしまったから。

「エアリス…エアリス…ッ」
、落ち着け」
「いやあああああ…!」

私はその場面を見た直後、気を失ってしまったから、そのあとセフィロスがどうなったかとか、全然知らない。
ただ、エアリスが、セフィロスのあの刃の餌食になったことだけは 覚えてる。

なんで、私は 生きてるの?
なんで、私は ここにいるの

エアリスはもう二度と、還ってはこないのに。

「クラウド、なん、で わたしっ」
「…」
「なんで、わたし、泣いてるの、なんで エアリスは、いないの」
「お前が泣いてるのは―――生きてるからだよ」
「なんで…生きてるの、エアリス は、死んだ のに」
「…お前は生きてる。エアリスは、死んだ…もう、戻すことなんてできない、出来事なんだ」
「…や」
…」
「嫌だよっエアリスに、会いたいよ…!」
「無理なんだよ、…」
「……っう、ああ…クラウドぉおおおっ…!」

無心にただ、クラウドに縋り付いて 泣いた。
きっとクラウドは、痛かったんじゃないのかな。力いっぱい、爪も立ててしまったから。
―――でも彼は、何も言わず 優しく抱き締めてくれていたんだ

「クラウ、ド…」
、大丈夫だ、大丈夫だから…お前は俺が、守るから…」


エアリスが光の中に消えて ひとりぼっちだった暗闇の中

静かに、後ろから優しく名前を呼ばれた。

振り向けば、ゆっくりと私に向かって 手を差し伸べられて。

その手の持ち主は、


「クラウド、…あり、がとう」