…何と、言えばいいのでしょうか。
悲しいのか苦しいのか、それとも清々しいのか。
何とも言えない、この胸の中を渦巻く感情を、私は言葉にすることができないでいた。
堪えきれず涙を流す切原君や丸井君を肩をぽんと叩き、そしてそこから伝わってきた熱に、

――――― その時、ああ、これは 虚しさ なのだと、私はやっと理解した。





『 ゲームセット! ウォンバイ……越前リョーマ 6−4! 』

歓声の中響いたそのコールは、青学の勝利を称えるもの。…立海の、敗北を表すもの。
その言葉は確かに耳を、鼓膜を伝い脳まで届いたはずなのに、そのまま反対側の耳から逃げていくような感覚に陥った。

私は、泣きも笑いもしなかった。いや、できなかったというのが正しいだろうか。

何故なら――― 自分は試合に出ていないから。
別に出なくてよかったなんて言えば嘘になる。けれど、納得していた。このオーダーに。
オーダーを発表した時の、有無を言わせぬ、けれども申し訳ないと表情と言葉で謝ってくれた幸村君に、
私は幾分か救われたし、説明されずともこのオーダーの理由も分かったし納得できた。
…けど、甘かったのだろうか。否、確実に甘かったということだろう。

いざ、仲間たちが目の前で闘っているのを 自分が傍観者として観たとき………
そう、何とも言えない虚しさに襲われたのだ。



全国大会が終わって もう3日が経つ。
3日も経つというのに…私はまだまだ、引き摺っていて。

“ 出たかった ”と 呟いては、自嘲する。

「やぎゅ」
「…さん?どうされたのですか?私に何か御用でも」

目に溜まった熱いものを悟られないように、いつものように微笑んで見せた。
…引きつっては、いないだろうか。ちゃんといつもの 微笑だろうか。
さんは私の心の葛藤を知ってか知らずか、にこ、と笑って、いつものように私に擦り寄ってきた。

いつもなら、ここで私がさんの頭を撫でる。
そうしようと、腕を伸ばすがそれよりも先に―――――

私が、さんに頭を撫でられていた。

「っえ?さ」
「………」
「……。」

さんは何も言わず、私も頭を撫で続けている。
私も何も言えなくなり、ただされるがまま。

…あたたかい。やさしい、愛しい人の手。
撫でられているのは頭のはずなのに、何故か心までもを撫でられているような錯覚に陥った。

慎重的に、だいぶしんどそうにしながら、さんはただ私の頭を撫で続ける
そして、私は―――…私の目には、だんだんと涙が溜まってきていた

あまりにも優しい、その手は ただただ私の心を慰める
やめてください、とも言えず やめてほしいわけでもなく。
私は抗う術を知らずに、静かに 涙を流した。






青 春


エンプティネス

( ねえやぎゅ。泣いてください。胸に溜め込まず、流してください。そして涙を流し終えたら…どうか、前を向いて 笑ってください )






[ Love Mistake. ] 紫陽 華恋

テニプリ完結記念ということで、フリー小説にします。期間はありません。
背景以外のソースをそのままお持ち帰りくださいませ(この文は消してくださって構いません)