ずだだだだだだだだだだ… 「(あーもーありえない自分ありえないちょっと日吉くんが萌えだったからってあんな簡単にグラつくなんて…!)」 あたしは突っ走っていた。さっきのちょっとした出来事が何故だかものすごく必要以上に恥ずかしくて、ただ走っていた。 …そして、曲がり角に差し掛かった時、まるで景吾たちと初めて出会ったときのように、 一瞬、視界一面に芥子色が広がって。 どんっ!! 「っきゃ!」 「ッテェ!」 ――――― 見事に、人とぶつかったのであった。
紺碧色の空に、柑子色の約束を。
「っ…い、」 「てぇー…」 「いったいわねこのワカメ!!!」 「んだとこのブス!!!」 「!! ブス…ですってええ…?(ピキーン)」 「ブス。( …ってすっげえ美人だし! )」←今更引き下がれない 「ほほーう…この 絶世の美女様 にブスとは…アンタ目ぇ腐ってんじゃないの?さすがワカメ(?)」 「アア?んだとこのナルシスト女!」 「うっさいわよワカメ!」 「ナルシ!」 「ワカメ!」 「ナル 「いい加減にせんか!!」 ゴンッ 「ってえー!!!」 今まで、あたしとこのワカメ男の言い合う声しか響いていなかったこの場所に、新たな声(と鈍い音)が響いた。 ワカメ男を見れば、とても痛そうに頭を抑えている。どうやら殴られたらしい(はっはーいいザマね!) この、( …あれ、この人… ) 「…真田…( なんだっけ )…副部長?」 「?そうだが…」 「ナルシ、真田副部長を知ってんのかよ」 「ワカメ五月蝿い。―――…って、あれ?そういえば、アンタ……切原赤也?」 「え!?俺んことも知ってんの?何、実は俺らのファン?つかアンタその制服、氷帝だろ?何でこんなとこまで」 ( …また、ファン?景吾と同じようなこと言うわね… ) そう思い、じっと切原赤也の顔を見てみる。 ( うーん…まあ、あどけなさは大分残るけど、整ってるっちゃあ整ってるか…。あたしと比べるとただのワカメだけど。 ) 「おい」 ( ん?待てよ、何かこの芥子色のジャージも見たことある… ) 「おーい」 ( 何だっけ…えーと、り、り… ) 「おい!!」 「立海?」 「っえ?あ、ああ立海生だけど…なんだよ急に…人の話全然聞いてなかったくせに」 ――――― また、だ。 氷帝のみんなと会った時と同じ。 知らないはずなのに、知ってる。真田くん( え、つかこの人何歳? )や、切原赤也や…立海大附属中のことを。 なんていうか、それは…すごく不思議で、不気味で、気持ち悪い感覚。 ――――― まあ考えても分からないからどうでもいいんだけど☆←のん気 「ねえ切原あか」 「赤也、俺はもう帰らねばならん。ではな」 「あっハイお疲れっス!」 …遮られました。真田副部長(年齢不詳)に。くそう覚えてろ!今度家にワカメ(本物)を投げ込んでやる! 「…でさあ、切原赤也」 「何でフルネーム?」 「え、じゃあワカ也 「 何でだよ 」 ゴスッ ぱしっ ダアアン!! 「…っゴホ、ぃ…ってぇ…!」 「あ…なんかごめん!テヘッ☆」 「ア、アンタなあ…!!『テヘッ☆』じゃねえよ!何考えてんだ!」 「ちょ、切原赤也今の超きもい!」 「アンタの真似しただけだろうがああああ!!」 切原赤也がツッコミと共に繰り出してきたチョップを受け止め、思わず一本背負いしてしまいました☆テヘッ☆(2回目) いやなんか条件反射でさー。 「いや、ほらこう美しいとさ?ストーカーとか痴漢も絶えないわけよ。だから護身術くらいわね」 「…中身を知ったら誰も寄ってこないだろーよ」 「失礼な!」 ムカついたのでチョップをしておきました。 …って、そうじゃない!さっきから全然本題に入れてない! 「あのさ。………ここ、どこ?」 「――――― は?」 「だから、ここ、どこかなーって」 あははっと笑ってみる。 …うん、予想通りの反応。お前馬鹿じゃね?って顔してる。分かってるわよ!!! 「いや無我夢中で走ってたら知らない場所に来ててさ…まあ“この世界”は全部知らない場所なんだけど」 「は?」 「ああいや、こっちの話。で、ここ、どこ?」 「…都道府県で言えば、神奈川」 「……ホワッチューセイ?」 「は?」 「( え、もしかして英語苦手か? )だから…今、何て言ったの?って…」 「だから…神奈川県。」 マジデスカ。 あたし、走って県越えたんデスカ。 「…あのさ、切原赤也」 「…なに」 「マジで申し訳ないんだけどさ、お願いがあ 「 嫌。 」 …何この子! 「あ、アンタねえええ!聞く前から拒否とはどういうことよ!」 「だってぜってえ碌な願いじゃねーだろ!」 「なっ…ちょっと氷帝まで送ってほしいってだけじゃない!!」 「それ見ろえげつないじゃねえか!!!ここ神奈川だぞ?氷帝っておま…めちゃくちゃ県外じゃねえか!!」 「ぐっ…」 なんていうか、正論。 あたし自身信じられない。いくら無我夢中で走ってたからってまさか神奈川まで来るとは思わないわよ! なに、あたしって実はスゴい人?いらないスゴさだけど。 「お願い、切原赤也…!!」 ワカメに頭下げるのは嫌だったけど、頼れるのはこいつしかいない。 ちょっと大分ムカつくけど、悪い奴じゃなさそうだし… そう思い手を合わせ頭を下げていると、じゃり、と踵を返す音がした。 「…赤也」 「へ?」 「フルネームはウゼーから、名前で呼べ。…で、アンタの名前は?」 3歩ほど歩いて、少しだけ照れたようにしながら、切は…、……赤也は、むすっとこちらを振り向いた。 そんな素直じゃない赤也に、思わず頬が緩んで、 「。…… !」 満面の笑みでそう答え、赤也に走り寄って行ったのだった。 ――――― でもまあ、あたし達がそんなすぐに仲良しこよしになるはずもなく。 「ったくウルセーなあ黙ってついて来いっての!」 「はあ?元はと言えばアンタが…」 そんな風にゴチャゴチャ言い合いながら歩くこと、約1時間半。 やっとのことで、氷帝学園に到着いたしました。( え、マジであたしありえなくない?やっぱスゴい人? ) ( あーみんなに会うの気まずいな…よく分からんまま飛び出してきたし…マネの件断っちゃったし…日吉くんは萌えだし )←関係ない 「じゃあ、俺帰るわ」 「え!…あ、そっか…」 赤也はまだ、1時間半、もしかしたらそれ以上かけて、神奈川に帰るんだ…。 ( すごく、ムカつく、生意気な奴。 ) けど―――――……… 「…ありがとう、赤也」 「…じゃあな、。また立海遊びに来れば?」 「うん、行ってあげないと赤也が寂しがるだろうしね☆」 「馬鹿じゃねーの!?」 赤也はそう言い捨てると、重そうなテニスバッグを肩にかけ直し、駆け足で来た道を戻っていった。 一種のトレーニングってとこだろう。 「――――― それにしても…」 最後の言葉が 馬鹿じゃねーの…。 「ッフフ、赤也らしー」 その後氷帝テニス部へ戻ると、レギュラー達からリンチされたのであろう日吉くんが倒れ、 景吾は腕立て、忍足は逆立ちなど、あたしが出てったことへの反省として(?)皆よく分からない行動をしていたけれど、 とりあえず急にトイレに行きたくなって飛び出したが場所が分からなかったということにしておいた。( そして騙される馬鹿共。 ) 神奈川まで行ったとかバレたらアホ丸出しじゃん。 「じゃ、帰るか、」 「景吾。…うん」 彼との出会いは…偶然か必然か―――――――――― 赤也出してすんませんorz 当初では全然予定なかったのに(笑) 主要キャラとなります。 |