「高田、紀代さん?」 が、静かに話しかける 彼女は、空から視線を外し ゆっくりと振り返った。その顔は、無表情。 『…あなた、誰?』 に向かってそう問う彼女に、オレは少しだけ気になっていたことを聞いた 「高田…サン。関係のないことを聞くが、オレのこと知っちょるか?」 『…仁王、雅治…?あたしが視えるの…?』 彼女は本当に驚いたように目を見開く でもそれも一瞬で、すぐに無表情に戻った 「高田さん。私達はあなたを救いに来たの。…どうしてその人生を若くして閉じようと思ったのか、聞かせてくれる?」 『…嫌…あなたたちなんかに話すことなんてなにもないわ。あたしはただ復讐するだけ…』 その瞳には憎悪。―――…そして、悲しみの色が見えた 「……なら、いい。これから毎日あなたに会いに来るから…私のことを知って? それで話せると思ったら、話して欲しい」 『…。』 「…」 「…」 「これでいい。仁王くん、帰ろう」 の言葉に頷くと、俺はもう一度だけ高田の方を一瞥すると、踵を返した ―――キィイイ… バタ ン 『そう…あたしは復讐するだけ。救いなんていらない あたしは……あの人に…』 「……」 「仁王くんも、気付いた?…高田さんの…瞳の表情」 「…、ああ」 顔には表情は無かった。 でも、その瞳だけは違った。 一言一言言葉を交わす度に、彼女の瞳は揺れていた 「とにかく私は一旦帰るよ。高田さんに言った通り、明日から毎日来るから」 「…本気か?神奈川まで、毎日?」 「そりゃ、自費での交通費はキツいけど…」 でも、絶対に救いたいから。 そう強く言った彼女に、俺はフッと微笑んだ そして、ある提案を持ち出す 「…なら、オレん家に泊まりんしゃい」 「――…は!?」 「お前さんのこと、もっと知りたい。…それに、そうすれば交通費もいらん。丁度エエじゃろ」 淡々と言葉を述べるオレに、は目を見開いて叫んだ 「本気で言ってるの!?わ、私は女の子ですよ!?」 「…」 「ちなみに、ご家族は?」 恐る恐るというように、寧ろ…最後の希望に縋るように、はオレに問う 「問題ない。1人暮らし。」 「尚更問題だよ!!危ないじゃん」 そう言ったの頬は赤かった。 オレはニッと口角を吊り上げる 「何が?」 「何が…って…私の貞操が!!」 「随分直球に言うんじゃの。…安心しんしゃい。程度に欲情なんぞせん」 「!!」 ガーン。 の背後に、その効果音が見える…( ククッ… ) 「何か…すっごいとてつもなくショック…」 「何じゃ、襲われたかったんか?」 「んなわけないでしょ!…そうじゃなくてですね、あそこまでスッパリ言われると安心通り越してショック、みたいな?」 そんなに色気ないかなー、とは自分の体を見つめている 「…で、どうするんじゃ」 「……お邪魔させていただきます」 「よし。…じゃけぇ、学校はどうすんじゃ?」 「この際解決するまで休む。校長もセンセーも私の仕事は知ってるから、多少は大目で見てくれるから」 「…そうか」 その後、真田達に事情を話し、( 「仁王ん家に泊まるんだって?気をつけろぃ」「余計なお世話じゃ」 ) と共に、いざ我が家へ。 「ここじゃ」 「…それなり、だね」 「まぁのぅ。1人暮らしにはうってつけじゃ」 ボロくもなく、新しくも無い 何の変哲も無い、5階立てのマンション。 …まぁ、マンションという時点でそれなりに豪華なのかもしれないが。 「オレの部屋は5階じゃ」 「最上階、ってことだね」 「そ」 エレベーターを呼び、乗り込み、「5」のボタンを押す。 重力に逆らって上へと登り、ポーンという音と共に5階に到着した 「5階には部屋は3部屋しかない。オレは1番左」 「ふぅん…」 鍵穴に鍵を通して、クイっと回す ガチャ、という音がして施錠がとかれた。 扉を開けて、に振り返った 「―――…どうぞ、お姫様」 「何言ってるの…」 の後に続いて自分も中に入った 鍵を閉め、とりあえずをリビングに案内した 「広ッ…、…この家って、どんな構造?」 「3LDK」 「( どこが1人暮らしにはうってつけなの… )…1人暮らしには、広すぎない?」 「まぁ…そうじゃの。けどいつもあいつ等が居座るからそうでもない。よく泊まりにも来る」 「あいつ等って…テニス部の?」 「ああ」 がリビングのソファに腰掛けるのを見送り、キッチンでコーヒーを入れた ミルクとシュガーを持ち、リビングへと戻り、の正面に腰掛け、テーブルにコーヒーカップを置いた 「あ、ありがとう。…仁王くんは、もしかしてブラック?」 「ん、そう」 「スゴイねー…」 ミルクとシュガーが入ったコーヒーをかき混ぜながら、が感心して言った 「…でも、益々見れば見るほど広いね、この家。…お父さんは、仕事何してるの?」 「ごく普通の建築会社のごく普通の会社員。」 「そ、そうなんだ。それなのにこの金持ちさは何なの…」 「……母親の方が、アパレル関係の会社を1つ経営しとる」 「へー!だからだね」 納得したらしく、は成る程ーとか呟きながらコーヒーカップに口付けた 「うん、美味しい」というの言葉に「そうか。良かったのぅ」と返事をして、ふぅ、と息を吐き出す 「…そういえば、お前さん 着替えはどうするんじゃ」 「あー大丈夫。持ってこさせるからさ」 「…誰に?」 「ん、そろそろ来ると思う。仁王くんの家に泊まるって決まった時点で知らせといたから―――」 ピンポーン 「来た」 「…出る」 ソーサーにカップを置いて、立ち上がった。 オートロックなので、オレが玄関の扉を開けなければ人は入ってこられない 「はい」 『と申す者です。様はおいでになられていますか?』 「ああ、おるぜよ。…開けるから、入ってきんしゃい」 『有難う御座います』 聞こえてきたのは、それなりに若そうな青年の声だった 「…さん?が来た」 「うん、了解」 は頷いて立ち上がると、玄関へととてとて走っていった。 自分も気になるので、そんな彼女の後ろに付いて行く ピンポーン 二度目のチャイムが鳴った。 今度は、扉の前にさん?がいる 「ハーイ」 「さん!酷いですよ、僕をパシリみたいに…!」 「っていうか、パシリでしょ?は。今更だよー」 「…っ!(ガーン)」 、という人は、やはり20代前半くらいの男だった オレの視線に気付いたのか、此方を向いて頭を下げた 「初めまして、仁王くん。 さんの部下のです」 「ぶ…部下?」 「っていうか、パシリ?」 「酷いです…っ!」 オヨヨ、と泣き真似するサン 中々面白い人のようだ 「解決までの間さんのこと宜しくお願いします。それでは…」 荷物をに渡すと、サンは一度オレに頭を下げてそう告げてから、家を出て行った 「…。」 「ごめんね、って変な奴なんだ。 それと、部下っていうのは…私の所属する( バイトだけど )会社…っていうのかな、事務所?は、 霊媒師1人につき1人、部下をつけてくれるんだよね。 言わば、マネージャーみたいな?っていうか寧ろパシリ?みたいな?」 「…そうか( スゴイ言われようじゃの… )」 パシリの。 ( …ふむ、覚えた ) 「じゃあ早速、私はどこで寝ればいいんですか?」 「…オレと一緒に寝る?」 「馬鹿モーン!」 とりあえず、ウチに居候が1人加わりました、と… |