「…ウソじゃろ?」
「んもー!嘘じゃないって言ってるでしょうが!!」

そう言って喚く女( ガキ… )
本性が見えてきた。
教師陣の前では澄ましていたが、コイツは結構五月蝿い

「私は高1!高・校・一・年・生!おのれらより年上なんじゃー!」
「分かった分かった。ちょぉ黙っとって、
「煤I!」

「…コイツが、高田の幽霊を浄霊してくれるんじゃと。オレはその手伝いをすることになった
 みんな仲良くしんしゃい。イジメたらあかんぜよ?」
「…って何小学生の転入生の紹介みたいな紹介してんのさ仁王くん!」
「冗談じゃ冗談。」

現在、場所はテニス部部室。
とりあえず教師達との会話が終わったはこの後予定は無いというので引っ張ってきたのだ
案の定真田に怒鳴られ、( 「休憩が長すぎだ!」 )それはまぁ良いとして、
その理由としての紹介と目的と、オレが手伝いをすることを告げた ら

「…仁王…お前、ユーレイ見えたのかよ!」

そう言ったのは、丸井。

「…視えるぜよ?今もお前さんの後ろに血まみれの女が…」
「ギャー!!」
「…嘘じゃけど」
「嘘かよ!!」

喚く丸井。
( …ああ、丸井とは同類項じゃの… )
そう思ったのは、オレだけの秘密。

「しかし、仁王。昔からよく何も無いところに目線を投げていると思ったら、そんなものが視えていたんだな」
「…柳」
「ふむ…新しくデータに加えねばならないな」
「( 何のデータ? )」

柳と話している今現在も、には赤也が話しかけている。
大声で笑って、満面の笑顔を浮かべて……楽しそうだ。
…益々、年上には見えない

「…の身長は146cmだな」
「んぎゃっ!何で分かったの柳くん!?―――…あ」
「おおよそで言ったのだが…どうやら当たりだったようだな」
「……146cm…か…予想より小さいのぅお前さん」
「仁王くんは初対面の時から失礼すぎるよ!もうちっと年上を敬う気持ちはないのかね!?」
「…年上に見えんけぇ、仕方なか」
「フォローになってない!」

柳生と真田は部室の隅の方で静かに茶を啜っている。
真田は部活を中断され部室内でこんなに騒ぎ…、随分迷惑そうだ

「…お前等!」

真田が急に声を張り上げた。…とうとう、堪忍袋の尾がきれたらしい

「部活もやらずにそんな小娘と一緒にじゃれているとは…たるんどる!」
「拍ャ娘!?そっちは老けてるじゃないですか!それで本当に中三のつもりなんですか!?」
「…、何で敬語なんじゃ」
「ハッ、つい…。真田くんを見ると無意識的に敬語になっちゃった」
「……たるんどる!」

真田はあっちを向いてたそがれてしまった。
…ってことで無視

サンってどこの生徒なんスか?」
「ん?山吹高校」
「山吹高校…って山吹中の高等部?」
「そー。だから今日は東京から神奈川まで出張してきたんだよ。自費で!!バイト代もあと少ないのに…」
「バイトしてるんスか?」
「これがバイト」
「え?」
「…だから、浄霊がバイトなの。ま、お金なんて貰わなくても浄霊はするけどね」


―――それが私の役目だから


「…お前さん、浄霊浄霊言うとるが除霊はできるんか?」
「ううん。除霊はできない。…それに私、これでもただ霊が視えて話せて触れるだけで、他に能力何も無いよ」
「えっお札とか使わないんスか!?」
「うん。一応、一般人を巻き込まない為にも緊急時の時の為に持ってはいるけど…
 私は言葉を交わすことで霊たちを成仏させるの。…自分の言葉を信じてるから…それ以外はなにもしない」
「へぇー…カッコいいっスね!」

何だろう
今だけは がとても年上に見えた。

は…何で霊媒師…ちゅーか、浄霊師 しとるんじゃ?」
「…」

の瞳が、一瞬揺れたのが見えた
は一度息を吸うと、強い瞳で、オレを見据えた

「…感じるから。」

そう言ったの表情は 真剣 そのもの。

「…感、じる?」
「うん。感じるんだ
 霊たちが 救いを求めてる声が…苦しむ声が…聴こえるんだ
 そしてその苦しみをとても感じる
 だから、救ってあげたい。苦しみから解放してあげたい。

 …それだけだよ」

最後に、は笑った。
「自己満足だよね」と自嘲的に…笑った。
俺はそんなの頭に手を置いて…撫でた

「っ!?仁王くん!子ども扱い―――」
「そうじゃの。」
「え…?」
「感じる。…それだけで、充分じゃな。救ってる理由なんて」
「!……うん、ありがとう」
「自己満足は全ての始まり。たとえ自己満足だとしても相手が救われるのならそれは立派なことじゃけぇ」
「……そう、…そうだよね!」
「……オレも、全力で協力するきに、一緒に 救おう」
「―――…うん!」

自己満足。
それでもいいのだ。寧ろ、が自己満足を求めなければ霊たちは救われることはなかったのだ。
だから、それでいい。それでいいんだ

( “感じる”…そうだな。それだけで、充分じゃの… )

さっき、に会う直前
俺は、こんなことを思っていたんだ

『 いくらその姿が視えるといっても、自分にできる事など何も無いのだ 』

違う、やろうとしていないだけ。
できることはある。あるのに、それをしなかっただけだ。面倒だ、と 逃げていた

今でもそれは面倒だと思う。
でもこんなに真剣に霊たちを救おうとしている少女がいるのに、自分はただテニスをしているだけなんて、
なんだか格好悪く思えた。

そう、これも自己満足。
しかも、オレのプライドに関する自己満足。
でも、これで1人でも多くの霊が救われるなら、それは自己満足でなく誇りに変わるのだ


「…さて、早速その高田さんとやらに会いに行ってみようか」


の言葉に、俺はしっかりと頷いた





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