梅雨は憂鬱と恵みの季節。
湿った空気と
雨の匂いに包まれて、

僕らの世界をぬらしてゆく雨たちは


楽しそうに嬉しそうに  微笑んでいた。






君と歩いた季節の中に act.10 - 終わる梅雨によせて -







教室の前に貼ってあるカレンダーを見て、気付く


「関東大会の決勝って…夏休み入ってからなんだね」
「おお、そうじゃ」
「前と同じ会場でしょ?観に行くね」
「あんがとさん。今度は俺も絶対試合出るけぇの」


よう見ときんしゃい。
そう言って微笑む仁王はキラキラしていた。
いつも銀髪はキラキラしてるし、私にとったら仁王の全てはキラキラしてるんだけど、何ていうんだろう。
青春してます!みたいな。
とにかく、テニスが好きなんだってこと、全身が語っていた。


「活躍期待してるよ。応援してるから」
「ん」
「…同じ日に、幸村くんの手術もあるんでしょ?」
「…ん」
「そっちも、応援してるから」
「…あんがとさん。幸村も、喜ぶけぇの」


少しだけ、少しだけ哀しそうに笑った仁王に、私はそれに気付いていないかのよう微笑み返す

( 頑張ってね、みんな )


「…ね、仁王」
「ん?」

「ほら、太陽出てきたよ」


すべてのいきつく先に、喜びが待っていますように。





梅雨が開け、待っていたのは暖かな太陽

僕らを照らし、夏の始まりを告げる









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*これにて梅雨は終わり。次は夏に入ります