離れないんだ、頭から

あの、短い夢のような ワンシーンを。


何度も何度も、頭の中を駆け巡る。






君と歩いた季節の中に act.14 - 入道雲が見ていた -







「ごめん、おまたせー」
「いや、いいぜぃ。んじゃ帰るか」


着替え終わり、待ち合わせていた海の家の前へ。
そこへ行くと男子陣はすでに集まっており、やはり男子は着替えが早いなぁと感心する

ふと仁王を見ると、なんだかぼけーっとしていたので、話しかける


「仁王?どしたの?」
「っん?ああ、いや…なんでもなかよ」
「そう?ならいいけど」


それだけの会話を交わし、女子3人で集まり歩き出す
やはりする会話は、恋バナだ。


「で、どうだった2人とも!」
「え…ちゃんは結構いい雰囲気だったよね?」
「まぁね、脈ありかも。でもだって結構仲良くしてたじゃん」
「え、そうかなー?うんでもま、頑張るよ」


…うん、順調みたいだ、この2人は。

協力した身としては、喜ばしいことこの上ない。


「で、は?」
「へ?」
「そうよ、よ!はどうなのよ、仁王くんと!」
「はあっ?友達って言ったじゃん…」
「でも、は好きなんでしょ?」

「…見抜かれてる…」


やはり恋する女は他の女の恋にも鋭いのだろうか…。


「うん…でも、私たちは友達だから」
「えー?」
「…が満足ならそれでいいけど…。でもさ、辛くないの?」

「…辛くないって言ったら嘘になるけど、楽しいよ。前のことを思えば、傍にいられるだけで、嬉しいしね」

「…ッ健気…!」
「応援してるからね、!!」

「え、あ、うん ありがとう…?」


多分無理だろうなぁと思いつつ、一応は頷いておく。

私と仁王の仲がいずれそうなることなんて、想像もできないや。










「女子たち楽しそうだな〜」
「やっぱアレじゃないっスか?恋バナ!」
「あ〜…俺たちのことね」
「何だブン太先輩お見通しっスか?」
「そういうお前もな」
「へへ…」


笑いあう二人の後ろを、仁王は静かに付いて行く

視線の先には、がいた。


帰りの間、仁王がずっとを見ていたことを知っているのは、

きっと  空を漂う、雲だけ。








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