私たちはまだまだ子供だから、

自分だけで生きていくなんて、できやしない


そう これも、大人になるためのひとつの試練。






君と歩いた季節の中に act.19 - 寒くなったね -







「他のみんなは、どうするんだろうね。
 やっぱりこのまま高校に進学するのかな」
「他のみんなって…たとえば元テニス部の奴らとか?」
「そう」


私の話題から離れたくて、元テニス部の彼らのことを聞いてみた。
もともと、興味があったし


「あいつらもそのまま上がるじゃろ。けど…」
「けど?」
「普通科に上がるか、工業科に上がるか…それは変わるじゃろうけどな」
「あ…そうだね」


立海には、高等部は普通科である立海大附属高等学校と、工業科である立海大附属工業高等学校がある。
私は立海高には進まないため、あまりよく知らないけれど。


「こんな話、あいつらとはあんまりせえへんしの…」


クク、と笑う仁王。
銀の髪が揺れる。


…きっと、中学を卒業したら、私と仁王はもう、会うことはないだろう。

少し寂しいけれど、大丈夫。

もう満足だ。

2年間の間、見つめるしか出来なかった彼と

2人で勉強したりできるほど、私たちは仲良くなれたのだから。


「( これ以上望んだら、罰があたるくらい )」


外を見ると、落ち葉がひらひら落ちていた
少しずつ暗くなり始めている空を見て、


「そろそろ、帰ろっか」


その言葉に仁王は頷いて、2人で広げていた教科書や問題集をカバンに直す
ファミレスをでて、私は一言、


「寒くなったね」


まだまだ残暑が残る季節だけれど

夜風は少し、ほんとに少しだけだけれど、つめたい。

びゅう、と吹きぬけた風に



仁王も一度だけ、ただ黙って頷いた。







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