散り損ねた桜の花弁が
静かに、儚く、春色の空を舞う

それを揺らす風が
春の匂いを運んで


何かの始まりを告げるように、春が舞っていた。






君と歩いた季節の中に act.02 - 春の舞 -






「、くぁ…」


欠伸を耐え切れずに、小さく口を開けた。
同時に目に滲んだ涙を軽く拭き取り、ついでに肩に掛けたテニスバッグを掛け直した

「( 始業式の日も部活あるとはの…。朝練ないんが唯一の救いじゃな )」

今日が三年生の始まりの日だということくらい分かっている。
三年生というものが、中学最後の年だということも。

でも、別に寂寥のように思ったり、特に何も感じていなかった。
中学が終われば 次は高校へ進むだけ。
( それに、どうせ殆どの生徒がエスカレーターで高等部に上がるのだ。友達と離れるということも無い
 …まぁ、自分はそんなことで悲しんだりしないし、するようなキャラでもないけれど。 )

どうせ高等部へ上がっても、
また 今のメンバーでテニス漬けの毎日を過ごすことになるだけなのだから。





他の登校してくる生徒たちに紛れて、春の匂いのする校門をくぐった








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