思えばあの出会いは

春が僕たちに授けてくれた 奇蹟だったのかもしれない。






君と歩いた季節の中に act.03 - 出会いも別れも -






仲の良かった友達が、転校した。
それは2年の時から分かっていたことだし、見送りにも行ったけど、どこか実感が無かった。
学校へ来て、はじめてそれを実感したのだ

それは クラス発表の貼り紙を見てから。

自分の名前はすぐに見つけられたので、友達はどこなのだろうと探し始めたときだ
殆どの子たちの名前は、十数クラス分もある貼り紙たちを、2往復もすれば見つけられたのに
何度見ても、その友達の名前だけは見つけることが出来なかった
そこでやっと、あの子はもうここにはいないんだと、実感した。
そう思うと急に寂しくなって、悲しくなって、
体育館に向かう人たちの流れに逆らい、足の向くままに 自分の教室がある校舎の裏の
桜がまだ咲いていた木の下に 座り込んだ

「…」

特に何をするでもなく、風に揺られる桜を見ていた
…いくら寂しいからって、もう 泣くことなんて無かった
見送りしたときに泣いたし、もう…そんなに子供でもなかったからだ。

「( あ 始業式さぼっちゃった )」

ふと、気づく。
そういうつもりはなかったのだけれど、さぼったことに変わりは無い

「( 中学最後の年なのに、最初からサボりなんて… )」

不良への道を少し歩んでしまった!と一人ショックを受ける
強い風が吹いて 桜が散る中、
明日からは頑張ろう…と 一人意気込んでいると。(←因みにガッツポーズ)

ガサ


「…。」
「…。」


見られた。一人でガッツポーズしてるとこ見られた…!ヒィイ恥ずかしい!
恐る恐る音のしたほうを見てみる と

固ま っ た 。(もちろん私が!)


「ックク…お前さん、何一人でガッツポーズして…」


そこで喉を鳴らして笑っていたのは
我が立海大付属中が誇る男子テニス部のレギュラーで、「コート上の詐欺師」のふたつ名を持つ仁王 雅治であり


1年のときからの 私の想い人だった








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