凍りついたような空気と、

すべてを冷やしてしまいそうな風が私たちを包んだ。

息を吐けば、それはすうっと白くなり


冬の訪れと共に、残された時間はあと僅かだと、

早すぎる初雪が、私に静かに そう告げた。






君と歩いた季節の中に act.21 - 初雪 -







「…もう、いやだ テスト」
「…こないだ中間やったばかりな気がするぜよ」
「同感!」

中間テストのときに勉強していたのと同じファミレスにて、
私たちはまた、2人でテスト勉強をしていた。
相変わらず私は、仁王に数学を教えてもらっている。

「えーと、えーと……」
「さっきも言うたじゃろ。これをここに代入する。すると、ここの値は…?」
「………4?」
「……」

仁王は黙り込んだ。

( え、また間違えた!?あんなに教えてもらったし、結構自信あったんだけど… )

そう思いしゅんとしていると、

「正解」

その声が聞こえてばっと仁王を見ると、仁王はにやりと意地の悪い笑みを湛え、私を見ていた。
…え、わざとか。わざとなのか今の間は。

「…仁王のバーカ」
「……ほう?それが数学を教えてやってる俺に対する態度かのう?」
「スミマセン」

ああ、勝てない。色んな意味で勝てない。

ムスっとしながらも、私は真剣に数学にとりかかった。
何故ならば中間テスト…あんなにも仁王に教えてもらったにもかかわらず、
そんなに高い点数がとれなかったからだ。
前回よりは10点以上上がっていたため仁王は充分だと笑ってくれたけれど
それじゃ私が納得いかない。
せめて平均点くらいはとりたい。( 10点以上上がっても平均以下ってどんだけアホなんだ私 )



それからドリンクバー2つのみで居座ること数時間。

そろそろ店員の目も痛くなってきたし、外はもうとっくに真っ暗だったので、
また今度にしようということで、私たちは帰り支度を始めた。

会計をし、ファミレスを出た。


「っ寒…!?」
「…マジで、寒いの…」

入ったときとは比べものにならないくらいの、寒さ。
なんでこんな急に。

終わりとはいえ、まだ11月なのに。
これは寒すぎる。

そう思っていたら。





ひら ひら …





空から、白いものが降ってきた。


「…え、雪!?早すぎる、でしょ…」

「初雪、か」

「…」


早すぎる初雪が 私に告げる。私を急かす。

“ あなたに残された時間は、あまりないんだよ ”

そう告げられているようで、私は綺麗な初雪をあまり見ないようにと、


ゆっくりと、目線を下に下ろした。


吐く息は白い。

白い息と自分の足元だけを見ながら、私と仁王は家に向かって歩き始めた。







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