時が流れるのは 思ったよりも早い 君と歩いた季節の中に act.23 - ほかほか焼き芋 - キーン…コーン… 「っあー!終わったあ!」 「うおっ!いきなり叫ぶなよー」 「あ 丸井。どしたのこっちのクラス来て」 テスト終了のチャイムが鳴り、思わず伸びをしながら叫んだら、真後ろに丸井がいたようで。 ものすごく驚かれました。 ( それにしても丸井は2つ隣のクラス…ココに用ってことは… ) 「仁王ならたぶん職員室だよ」 「ああ、マジ?なんで?」 「今日国語だったでしょ?仁王国語委員だから、ノート集めて提出しに行ったの」 「国語委員?なんでぃそりゃ」 「え、丸井のクラスはないの!?」 「いや、ねーだろぃ普通」 「そ、そうだったのか…!」 衝撃の事実(?)にカルチャーショック(ちょっとちがう)を受けていると、 だるそうに欠伸をしながら、仁王が帰ってきた。 丸井がそれに気づき、仁王に駆け寄る 「にーおうっ」 「…丸井?なんじゃ、ウチのクラスに」 「今日さー部活に顔出しだけしに行こーってジャッカルと言ってんだけど、お前も来るだろぃ?」 ぷくーっと風船を膨らませながら、丸井が言った。 ( 「来るだろぃ?」って…なにその強気な推量表現。 )←国語のテストだったため脳内国語っぽくなっております 「…行かんぜよ」 「ええっ!?」 仁王が言った言葉に、丸井は大声を上げていつの間にか座っていた私の前の席から立ち上がった。 「…そんな驚かんでも」 「ちぇっ!なんだよ、ジャッカル以外みんな来ねえなんてよー」 「今度また全員で行くじゃろ…」 「そうだけどさー。……分かったよ。んじゃな」 ぷっとゴミ箱にガムを捨て、丸井は去っていった。(ちょっと寂しそう) 「…帰るか」 「え、あ、うん」 ぽけーっとしていると、不意に仁王が言った それにより私は現実世界に帰ってきて 慌てて鞄を掴み、歩き出した仁王の後を追った。 「なんでさー行かなかったの?用事かなんか?」 「ん?いや―――― 「焼き芋だ!」 …は?」 校門を出て少し歩いたところに 焼き芋屋さんの車がとまっていた。 焼き芋屋さんらしく、ピィーっという音が鳴っている 「私買う!」 「焼き芋ねえ…焼き芋はアタリハズレが激しいんよ」 「絶対美味しい!仁王も買おう!むしろ買ってあげる!」 「いや…俺が買っちゃるよ」 私がお金を出すよりも早く仁王は2つ分のお金をポケットから出し、おじさんに 「焼き芋2つ」 と言って、お金を渡した。 私の、財布を捜すために鞄の中に入れた手がやたらと(行き場がなくなって)寂しいけど うん、なんていうか… ( うれしい ) 「ほれ」 「ありがとっ」 あったかい焼き芋を受け取り、さっそくかぶりついた。 程よい甘さ。 これはアタリだった。 「で、今日用事とかあるんじゃ?」 「…用事があったら焼き芋なんか買わんと家に直行する」 「…そりゃそーだね。じゃ、なんで?」 「別に…めんどくさくなっただけじゃ」 そう言って、仁王は焼き芋を頬張った。 ( 「めんどくさくなった」って… ) 丸井が聞いたら騒ぐだろうな。 そんなことを思いながらも、私は仁王が行かなかったことが、ほんとはとても、嬉しかったんだ。 最近はずっと、なぜか一緒に帰っていたから。 仁王が行っちゃうと、一緒に帰れなかったわけだし、 もしかしたら、これから一緒に帰ることもなくなるかもしれない。 だから、嬉しかった。仁王が行かなかったこと。 「美味しいねっ」 「そうじゃの」 焼き芋を頬張って微笑みあう。 この暖かさを幸せと言うんだと、春に仁王と友達になったときから私はもうとっくに、知っていた。 |