キラキラと輝くイルミネーション

まるで夢の世界に入り込んだような世界に


僕たちは、確かにそこに 存在していた。






君と歩いた季節の中に act.24 - 冬を越えるモノ -







「「 Merry Christmas!! 」」


カラ…ン

複数のグラスで乾杯され、皆それぞれ自分のシャンパンを飲み干した
そう、今日は―――――元テニス部レギュラーと、(とその友人)でのクリスマスパーティ。IN柳生の家。
ちなみに、今日は12月23日。

シャンパンを飲み終え机の上にあったチョコレートに手を出しているをちらりと見て、
ごそ、とズボンのポケットを探った。
―――ある。


「のう、
「ん?あ、仁王 どうしたの?」
「お前さんに、これを――― 「今からプレゼント交換するぜぃー!!!」


俺がすべてを言い終える前に、丸井が叫んだ。

( まあ…まだまだ時間はあるしのう… )

そう思い、俺は軽く溜息を吐くと、と共に丸井の元へ向かった。


「あらかじめ言ってるとーり、くじ引きで順番決めて、1の人から順番に好きなモンを選んでいく!
 まー外装だけじゃ分かんねーだろうけどな!」


そう言って笑いながら、丸井はクジの入った箱を持ってみんなのところへ。
俺たちのところにも来て、適当に引く。隣のも同じように。


「せー…の!」


丸井の号令で、皆が自分のクジを開いた。
俺は―――――…


「…1番じゃった」
「え!うそいいな!私10番…。めっちゃ真ん中だ」
「変えたろか?」
「ううん、いいよ。最後とかじゃないし」


そう言ってが笑ったので、俺は1番のままで。
もちろん、1番最初にプレゼントを選ぶこととなった。
人数分のプレゼント。これは皆が各自持ってきたものだ。ちなみに、どれが誰のものかなんてわからない。
ただ―――――…
のプレゼントは、知っていた。鞄からはみ出ていた包装紙を、見てしまっていたから。


俺は、無意識に、

の袋を、手にしていた。


「仁王それでいんだな?」
「ああ」


丸井の言葉に返事をして、袋を持ってのもとへと戻る
後ろでは、2番の幸村がプレゼントを選び始めていた。


「…仁王、なんでそれにしたの?」


帰ってきた途端に、に問われた。


「…なんとなく、じゃけど、何?」


なんだかくすぐったくて、少し、素っ気無く言う
はそんなこと気にもとめていないようで、少し視線をそらしたかと思えば、


「それ、私のなんだよ」


“ 知ってる ” なんて、

“ 知ってるから選んだ ” なんて、いえなかった。


―――――俺たちは 友達 だから。


「…そうか」
「うん。…でも、仁王がもらってくれてよかったー。それ男の子の方が助かるんだよね」


もし女の子がとっちゃったらってヒヤヒヤしたよー、とが笑う。

( …すげー中身が気になるんじゃが )

けど、プレゼントを開封するのは全員選び終えてから、全員で一斉にすると決まっている。
なのでもう少し我慢。


「あ、私の番だから行ってくるね」
「ああ」


はプレゼントのところへ行くと、すぐに1つの袋を選び、帰ってきた。
確か、あれは丸井の―――

( どうせアイツのことじゃけえ、お菓子かなんかじゃろ )


「早く開けたいー!」
「俺も。お前さんが男の子のがどうのこうの言うから、中身が気になってしゃあない」
「ふふ、お楽しみ〜」


そう言いあっているうちに、遂に開封の時がきた。

袋を開けると、中には手のひらサイズの箱が入っていて―――
それを開けると、

黒いガラス瓶に入った、香水が出てきた。


「香水?」
「うん。私が凄い気に入った香りなんだけど、メンズものなんだよね」
「ああ…だから男」
「まあ女の子でもいけるとは思うけど、一応さ」


そう言って、は一瞬考えるようにしてから、また 口を開いた。


「…えっと、使ってくれたら 嬉しいなー なんて…」


そう言って照れたようにが言ったのと

部屋の電気が消えて、部屋の中心にあったクリスマスツリーがキラキラと輝きだしたのは

ほぼ、同時だった。


「…使うぜよ、ちゃんと」


薄く、ツリーの明かりに照らし出されたの方を見ずに、言った。

なぜなら、


( …綺麗 )


いつもなら絶対思わないけれど。
この時だけは―――


( クリスマスの魔力、かの。…あ、そういば、まだじゃった… )


の「ありがとう」と言う小さな声を聞きながら、俺は小さく溜息を吐いた。
今はいいタイミングだと思い、ポケットから―――


パッ


―――出す前に、部屋の電気がついた。


「じゃあ、最後のキャンドルサービスならぬツリーサービスが終わったところで
 今日のクリスマスパーティは終わりってことで!」


丸井の言葉で、皆が帰る準備をしだした
の例外でなく、自分の荷物のもとへ。


( …運悪いんかのう…今日は )


はあ、と大きな溜息を吐いた。
そして、のもとへ。今日も帰りは、一緒だから。( ちなみに自分の荷物は特にない )





「楽しかったー」
「まあまあじゃの」
「またまたー」


あはは、と笑う彼女の笑顔には、どこか寂しさが見えた。
いつだったか…多分、はじめて進路の話をしたときから、は時々、こんな表情をするようになった。

理由は、分からない。

―――きっと、知っても、どうにもならない。そんな気がする。
だから俺は聞かないし、聞けない。


「ああそうじゃ…これ、お前さんに個人的にプレゼント。」
「え!?あああありがとう…っ」


不意に思い出し、ポケットから小さな箱を取り出した。
そう、立て続けにタイミングが悪くなかなか渡せなかったものは、コレだ

は かなり驚いている。


「あっ、開けていい!?」
「ドウゾ?」


が嬉しそうに包装紙をはがし、箱を開けた―――――



びよよーんっ



「…。」
「っク」


は 間抜けな顔で固まっている。


「ククク…大成功、じゃ。えらい間抜け面しとるぜよ、
「っは!」


ようやく戻ってきたは、もう一度箱を見る。―――ビックリ箱を。


「仁王ー!」
「っは…クク…」


逃げるため、走り出す。
後ろを、が追いかけてきた。



寒い、寒い 冬。

なのに、今はとても あたたかい。


その理由を俺は知っていたけれど、気づかないフリをしていた。


今はまだ、この距離が 一番いいと思ったから。



けれども俺はこの先、この時そう思ったことを、本気で後悔することになる。



今このときは  そんなこと、思いもよらなかったけれど―――――…







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