おめでとう、なんて 思えなかった

だって、私にとってそれは、

おめでたいものなんかではなくて。


みんなと、あの人との お別れのカウントダウン。






君と歩いた季節の中に act.25 - 終わる冬によせて -







「5.4.3.2.1…明けましておめでとう!」
「おめでとー!!!」


近くのお寺で、クリスマスにも集まったメンバーで、初詣。
皆、騒いでいる。

――― 年が明けたから。

けれど、私は喜べなかった。
幸せな去年は、もう終わってしまったんだ。
今年は… つらい、お別れが ある


「どした?
「あ、仁王…。ううん、なんでもないよ。あけおめ!」
「ああ、おめでとさん」


そう言って、仁王は微笑んだ。





おめでとう


彼の口から出た言葉に、寂しさを覚えながらも


時は流れる。


私の思いなど、知りもしないで。





寒い冬が終わり、雪どけの季節が過ぎると、

もう一度、春がやってくる。


私と君とが出逢った あの春が…。









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*これにて冬は終わり。次は最終章:君と歩いた季節に入ります